いつから始めたのか覚えてないけど
ぼくが毎日寝る前に必ずしていること
『ぶんちゃんに気持ちを伝える』
言葉の意味は分からなくても
伝わってると信じてるんだ
だから、その時は
まっすぐぼくを見つめているし
一所懸命なめてくれるんだよね?
伝えるのは2つ
好き
ありがとう
思ったことを思ったまま言うので
日によって違うけど…
ぶんちゃん
ありがとう
今日も1日大好きだったよ
おとといより、
昨日より
今日のほうがもっと好き
明日もあさっても、
きっと
もっともっと今よりずっと好き
お留守番さみしいのに
がんばってくれて ありがとう
元気でいてくれて ありがとう
いい子でいてくれて ありがとう
いたずらしたから怒った時も
嫌いなんて思ったことないよ
おしっこ上手にできたね
ありがとう
笑わせてくれて ありがとう
やさしくしてくれて ありがとう
そばにいてくれて ありがとう
パパの子になってくれて ありがとう
産んでくれたママや兄弟と一緒にいたかっただろうに
ごめんね ありがとう
ダメなパパを好きでいてくれて
ありがとう
ずっと仲良しでいようね
パパもがんばるよ
おやすみ
愛してる
いつ何があるかなんて分からない
考えたら辛いし、涙が出るけど
ぶんちゃんとの別れは必ず来る
どちらが残されるかさえ分からない
だから、後悔しないように
思ったことをちゃんと伝え続けないとだめなんだ
そう思うのはね
きっとこんなことがあったから
お父さんのこと、大好きだったけど
ちょうどぼくは反抗期
お父さんが愛してくれているのに
つい突っ張ったり、意固地になってた
思いだせないけど
「嫌い」とか
「うっとうしい」とか
言っちゃってたんじゃないかな…
そんな時に突然帰ってこなくなったんだ
仕事中、外出先で死んじゃった
死ぬって何?
分かんない
でも、お父さんは帰ってくるんだよね?
遺品整理をしている時に
お父さんの財布から
折りたたまれたボロボロのメモ用紙が
出てきました
それを開くと
そこには
「父の日なのに
何もしてあげられなくてごめんね
お仕事がんばって」
それは出かける前に
ぼくがお父さんに宛てたメモ
いつもの特別なことのない連絡に
軽い気持ちで添えた言葉
なんで…
何でこんなものを大事にとっておいてるの?
それをいつもそばに
大切に持っていてくれたことを知った時
子どもなんかには想像できない
親の深い愛に包まれていたことが分かったんだ
ありがとうもごめんねも言えない
でも、次のチャンスでは言おう
お父さんが帰ってきた時には
何年か経ったある日
辛くてどうしていいか分からなくなった時、
手を伸ばせばつかめると思ってたお父さんに
ぼくの手は届かなかった
手も声も届ける方法が見つからない
分かってるつもりだったけど、
分かってなかった
分かりたくなかった
好きも
嫌いも
ありがとうも
ごめんねも
お父さんに伝えることはもうできない
本当に伝えたいと思った時に
それをやっと理解したんだ
伝えることも
伝えてもらえることもできない
それが「死」という別れなんだ
直接耳に届けられなくてもいい
「ありがとう 大好き」
そう言いながら号泣しました
だから、それからは気をつけてるんだ
「好き」と「ありがとう」は
思った時に絶対に伝えようって
喧嘩した時でも言ってやるんだ
「むかつくけど
それでも好きだから!」って
友達には
「なんだよ 気持ち悪いなぁ」とか
言われるけど
それでいいんだ
もし、ぼくが今消えてなくなっても
「好きだ」ってことは
分かってもらえてるもんね
だからって
絶対に消えたりなんかしないよ
ぶんちゃんを守るのがパパの役目だから
怖い映画を観たってなんてことないんだ
貞子が出てきたって
追い返してやる
でも…
トイレに行く時は
ついてきてね![]()
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