ぶちぶち日記 -27ページ目

読書の反省。でも変えられない。

一人暮らしを経験するまで、本は買って読んでいました。 新刊、文庫、古書合わせて月に20冊くらいだったでしょうか。 通勤・通学の電車は至福の時でした。 若かったせいか、読むのも早かったし、アタマにもよく入りましたっけ。。。

アパート暮らしを始めてみると、近所に図書館が! 金銭的余裕がなかったので、渡りに船と毎週通いました。 世田谷は図書館の多いところで、徒歩圏内に2つの図書館と1つの町角図書館があって、3箇所とも回ったりもしました。 予約という制度を知ったのもこの頃でしたが、記入欄の多い用紙に記入して提出するのがなんとなく面倒で、たいていは書架から選んでいました。 不思議なもので、書架の間をうろうろしていると、先週までは興味を引かなかった本にふと惹かれたりします。 1時間ほど徘徊して得た5冊を大事に読んだものです。

しかし。 今の私は、流れ作業的な読書をしてしまっているのです。 

予約がネットでできるようになりました。 電話連絡(メール連絡を始めて欲しい)を受けて取りに行くと、書架を徘徊する時間が節約(本当はそれも楽しい時間ですが)できます。 図書館まで自転車で30分近くかかるので、借りる本全てが予約本になれば、ずいぶん早く用が済みます。 地元の図書館は、予約数に制限がありません。 だから、新刊のリスト、ネットの書評、友人の口コミ、ちょっとでも興味を引かれると即予約。 予約待ちリストは常時50冊を下りません。

貸し出し限度は2週間5冊です。 連絡を受けたら1週間以内に取りに行かないと、権利を失います。 2~3日毎に連絡があるので、たいてい借りた1週間後には返却して新しい本を受け取っています。 予約が多すぎて、家族のカードも使って1週間に10冊なんてこともあります。 当然、時間が足りません。 丁寧に読む本と、飛ばし読みする本ができてしまうのです。 

料理の本のなら飛ばし読みでもかまいませんが、じっくり読まないとおもしろさが判らない本ってありますよね。 内容はいいのに、つかみが悪い本もあります。 でも、あせっていると、おもしろさに気づくことさえできない場合があるのです。 もったいない! 本への冒涜だ! 返却したあと、人の書評を呼んで読み直したくなり、また予約リストが増える。。。 悪循環です。 

借りないで、買うのが一番なのですが、今の私は無収入。 借りて気に入った本だけ買っています。 予約を減らすのも手ですが、興味を引かれる本は手にしないと気がすまないのです。 どうしたらよいのでしょう。

残る手は、速読を身につけることだけなのかもしれません。。。嗚呼。

いも恋

川越みやげに、「いも恋」というお饅頭をいただきました。 

白くて、なんだかコチコチ。 固そ~う。 と、思ったのですが、レンジでチンしたらむっちむちになりました。 封入されていたリーフによると、チンするのがデフォルトのようです。 

ひとくち。 あっちっち! まっ黄色なさつまいもと、つぶ餡の二段を餅粉の皮が包んでいます。 口中に広がるやわらかな甘さ。 うぁ、いくつでも食べられちゃいそうです。 さつまいもを裏ごししたりせず、そのまま蒸かして使っているのがポイント高し。 

冷凍保存も利くそうなので、今度まとめて買っちゃおう!

追記:お店は右門というそうです。

庭の桜、隣の犬 / 角田光代

この人の本を初めて手に取りました。 恥ずかしいのですが、どういうわけか「大平光代」さんと混同していまして、なんとはなしに敬遠しておりました。 「だからあなたも生き抜いて」なんだか、尻っぺたをたたかれそうな先入観があり、読む気になれません。。。 別人と判ってからも、なんとなく見過ごしておりました。 

ある表現にノックアウトされました。 主人公の一人宗二の父親について描かれているところです。「だらしなくて、なさけなくて、気の毒なくらい大人らしくない男だった」のに、家族が「毛嫌いして疎んじていたかといえばそんなことはまるでなく、なんとなく許容」しており、それが父の人徳というよりは、「だれも真剣にしつけようと思わない頭の悪い犬が庭先にいるのを家族じゅうが認めているようなことに、どちらかといえば似ていた」 !!!すごいです。 この父親の家族における位置がくっきりと判りました。

 角田光代さんというのは、表現のうまい人のようです。 折も折、直木賞を受賞されたことですし、受賞作を読ませていただくことにいたしましょう。

ミステリ十二か月 / 北村薫

読売新聞に一年にわたって掲載された、子供向けのミステリガイド。 1部が掲載分、2部は掲載時の挿絵を描いた大野隆司との対談、3部は連載中のエピソードや載せ切れなかった本について、4部は有栖川有栖とのガイドに関する対談。

まず目を惹かれたのがイラスト(カラー版画!)です。 猫をモチーフに、ガイドに紹介されたミステリが謎かけになって描かれています。 かわいい! 2部で、その種明かしがされているのがまた楽しかったです。

そして、北村薫のこだわりにも惹かれます。 何故その本を選んだか。 想いがこんこんと語られます。 ポーの「黄金虫」の読み方にもこだわります。 人がどう褒めたかまで、こだわります。

有栖川有栖との対談では、笑いっぱなしでした。 それぞれ評価する作品が違うのですが、お互いにその理由を一生懸命述べています。 デアンドリアの「ホッグ連続殺人」についての話が印象に残りました。

もう一つ、有栖川有栖の言葉で、「よく『ミステリは驚きの文学』って言い方しますけど、納得できてしまうこと、それが私にとっての驚きなんです」という言葉に思わず膝を打ちました。 まさに、ミステリの面白さはそこにあると思います。 意外な結末なのは、驚かない。 意外であることに、納得させてもらえたときにカタルシスを感じるのです。 意外な犯人、意外な方法、意外な理由。

最後に、このガイドから読んでみたいと思った本。 「白菜のなぞ」板倉清宣 平凡ライブラリー です(笑) いや、おもしろそうなんですってば。

名作は何度でも読めるのだ

ミステリ十二か月 / 北村薫
庭の桜、隣の犬 / 角田光代
犬は勘定に入れません / コニー・ウィリス
わたしが幽霊だった時 / ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
ブッシュ・ダイナスティ / キティ・ケリー
火車 / 宮部みゆき

刊行されたときに購入して、これは直木賞まちがいなし!と感動した宮部みゆき「火車」。 その本は入院した友達にあげてしまい、その後古本屋で何度か購入するも、結局どれも人手に。 大好きな本ほど、手元に残らないのです。 久しぶりになんだか読みたくなり、借りてきました。 読了本なんだから、最後に読めたら読もうと思っていたのに、帰宅後すぐ読み始めてしまい。。。 

「ミステリ十二か月」、挿画がかわいらしい! 紹介されているミステリに合わせて書かれていて、楽しさ倍増となりそうです。

「犬は~」このミスで9位でした。 書評でよく取り上げられていたので気にはなっていたのです。 が、「航路」を読み損ねていたので手を出しかねていました。 えぃ、こっちから読んじまえ!

リピート / 乾くるみ

見知らぬ男からの誘い。 10ヶ月前の自分の体に、意識だけが遡る片道の時間旅行。 誘いに乗った9人の旅人の身に次々と降りかかる死。 何故過去が変わったのか。

一気読みです。 SFとミステリのおもしろさが同時に味わえます。 やり直しの人生で、何故殺人の被害者が多発するのか、その理由が明かされたときには思わず膝を打ってしまいます。 カオス理論の説明も判りやすく、「タイムライン」(クライトン)を読んだときのように目を白黒させることもありませんでした。

ストーリーは怒涛のおもしろさですが、はて、10ヶ月のタイムトリップはやる価値があるのでしょうか。 登場人物たちも散々考えていますが、私はパスかなぁ。。。 体験としてはとても魅力的ですが、メリットは感じられません。 お金儲けはできそうですが、喪うものも多そうです。

ただし、読後感はよくありませんでした。 主人公がちょっとイヤな奴で(理解はできますが)あることと、救いがないことからくるのでしょう。 ひゃぁーお疲れ様ぁー!というのが一番の感想でした。

ところで、乾くるみが男性ってホントですか!?

MOMENT / 本多孝好

掃除夫の姿を借りた仕事人が、患者の最後の願いをかなえてくれる。 死をひかえた患者の間でささやかれる噂。 なりゆきで仕事人となったアルバイト掃除夫の大学生と患者たちの短いふれあい。

主人公に、不思議な魅力があります。 まるで傍観者のように、人との距離をおいているようなのに、まなざしは暖かく、親身です。 末期患者たちの心の奥まで分け入るようでいて、深入りしないのです。 彼自身の人生にさえ、なんだか他人事のよう。 

死を前にした願いはなかなかに複雑で、かなえようとするうちに違う姿を見せてきたりします。 その表裏に人生が顕れているようで、興味深く読みました。 気の利いたセリフもいい感じです。 ストーリーによって感動する物語というよりは、読後にふつふつと沸いてくるいろいろな想いをかみしめたい、そんな小説でした。

友人森野に激しくデジャブ。 乙一の「GOTH」にでてきた女の子は森野と言わなかったでしょうか。。。 乙一版森野よりはずっと普通のヒトですが、どうも受ける印象が似ています。 その後の森野なんじゃないか、なんて。。。 

赤まんま-慶次郎縁側日記- / 北原亞以子

シリーズが変わってきた気がします。 初期には、自害した娘美千代、養子の晃之助、その嫁の皐月と慶次郎の、切なくも真摯なつながりが多く描かれていました。 が、最近は市井の人々の物語に慶次郎たちが少し顔をだすような作品が多いようです。 娘を喪った慶次郎の心の傷にもかさぶたができ、不安定だった養子夫婦にも子ができて安定したからでしょうか。 同心を隠居した慶次郎に、人生の隠居も近づいているような、そんな寂しさを感じます。

「赤まんま」で描かれたのは、さまざまな夫婦です。 幸せを目指して精一杯暮らしているのに、人生は迷路のようで、袋小路にとまどうばかり。 妻と夫それぞれの切ない心模様がぎっしりつまった一冊です。

弁護士は奇策で勝負する / ディヴィッド・ローゼンフェルト

7年前に父が検事として関わった死刑判決の再審を、その父から依頼された弁護士アンディ。 急死した父の意外にも莫大な遺産、秘密めいた古い写真は事件に関係があるのか。 別居中の妻と恋人の間を揺れ動き、軽口をたたき皮肉を口にしながらアンディの迷走が始まる。。。

アンディの弄する奇策は法廷侮辱罪すれすれです。 やり方としては好きではないけれど、アンディの心意気が描かれているので、まぁ大目に見るか、と読み進みます。 口の減らないアンディは、足のほうもよく動きあちこちに調査に出向いていきます。 その先々で協力者を獲得していき、最後には予想通り勝利を修めるのです。 どうやら次作以降もタッグを組むことになるようで、なかなか個性的な人物ぞろい。 

法廷物でありながら、ライトな読み応えです。 が、中身がないかといえばそうでもない。 へらへらしてみえる外面に隠された、アンディの父への信頼、愛犬タラへの愛情、被害者の父親への敬意などが意外な奥行きになっているように思います。 展開が少々都合が良いような気がしなくもないですが、ライトな法廷物としては許される範囲でしょう。 

続編がでたら、読みたいと思います。

船宿たき川捕物暦 / 樋口有介

江戸屈指の剣客でありながらのんびりした真木倩一郎と魅力的な脇役たちの会話と設定ががおもしろい本でした。 武士が主人公でなぜ「捕物暦」なのかが不思議だったのですが、どうやら本書はシリーズ1作目としてかかれた様子です。 舞台が整い、次作が楽しみです。

読みながら頭に浮かんだのは大好きな藤沢周平の「用心棒シリーズ」でした。 真木と青江又八郎、荒井七之助と細谷源太夫が似ているのです。 残念ながら味わい深さでは段違いに藤沢周平の勝ちだと思いますが、このシリーズ(と勝手に決めている)はこれからです。 軽妙洒脱な時代小説を期待します。