倉ー美の日常は恥辱にまみれている。 -35ページ目


4月、あたしの大好きな、目にいれても痛くない程のお店が突然閉店した。なんの前触れもない突然の事態に、あたしはただ呆然とするしかなかった。まだ目に入れていないのに涙が出そうだった。そして、ものもらいが二回できた。

ようやく気持ちの整理がつき文字にすることができそうだ。

そのお店に出会ったのは結構前なのだが、正確には覚えていない。
学生時代の友人とたまたまふらっと入ったのだ。
その時はなんとも思っていなかった。
それから月日は過ぎ、この街に越して来たのが一年前。
この時も、たまたまふらっと入った。

何これ。
すんごい居心地がいい。
それでいて懐かしい。

そりゃそうだ。
昔に来たことがあったんだもの。

その時から、近所でまったりするならこの店だ。となった。

そこは店主(料理担当)とおっとりした雰囲気のパート主婦(接客担当)でやっている小さなオムライス屋さん。

立地、雰囲気、居心地、接客、客層、

すべてが完璧。

お陰で、週一でオムライスを食べていた。
もう大好きで大好きで不満なんて一つもなかった。

強いて言うなら、オムライスが美味しくないくらい。

そんなお店が突然閉店した。
なぜ?
どうして?
これから私はどうすればいいの?

いろんな感情が溢れ出た。

その日はただ呆然とお店の外観を見続けた。

少し冷静なって考えてみると、前兆はあった気がする。

一つは閉店の一ヶ月くらい前から接客担当が不在で店主だけで切り盛りしていた。
だからこそ、直接オムライスの味付けに関して注文ができたのだ。

前々から

ソースとライスの味付けをこの組み合わせにすれば、もう少し美味しくなるのに

と思ってはいたが、気分を悪くさせてはいけないと言えずにいた。
だか、店主が直接注文をとりにきたので思い切って言ってみた。
最初は驚いていたものの、最終的には優しい微笑みで了承してくれた。
あれは、もう閉店するからという諦めの境地からくる笑みであったのであろうか。
今となっては聞く術はない。

それでも、味はイマイチなオムライスだったのだが。

もう一つは、お昼時にも関わらず客があたし1人、ということが頻繁にあった。これは閉店の一ヶ月前とかではなく、一年前からずっとである。
ふと、どうやって経営が成り立っているのか不思議に思うことが多々あった。
しかし、あたしはそこから目を逸らしたのだ。

あの時その疑問と対峙出来ていれば、こうはならなかったかもしれない。
大好きなお店を守れたかもしれない。

そう思うと居ても立っても居られない。
だが、既に為す術はあたしにはない。

あれから二ヶ月が過ぎた。
未だにあのお店が恋しい。
ただ、不思議とあのオムライスは恋しくないのだ。

なぜだろうか。人の感情は謎で複雑である。

そして、逃げてはいけない。目を背けてはいけない。
無くしてから後悔しても遅いのだ。

あのお店はあたしにこのことを教えてくれる為に閉店したのかもしれない。

そう想いたい。