夜想曲集 カズオ・イシグロ
Nocturnes: Five Stories of Music and Nightfall 1,049円 Amazon リンキンパークのヴォーカル,チェスター・ベニントンが死んだ.リンキンパークを熱心に聴いてきたわけではないけれど,彼の声は,少なくとも何等かの歪みを僕の中に残している.彼のシャウトとクリーンボイスを初めて耳にしたときの,衝撃は今でも忘れらない.でも,もう二度と彼の声が,大気を震わすことはない.カズオ・イシグロの「夜想曲集」は,音楽にまつわる5つの短編集だ.「Come rain or come shine」を除けば,他4編は音楽に深く関わるミュージシャンが語り手である.一編一編,また違う味わいがあって,平易な文章に中に,深い考察とユーモアが含まれていてる.なんだかカルテットくらいの小気味良いのジャズ演奏を聴いているような気分になれる.4番目の短編「Nocturne」の主人公である,腕は確かなのに顔が醜いために売れないサックス奏者は,奥さんに逃げられ,マネージャーに言葉を真に受けて,成功する保証のない整形手術するため入院する.その入院をきっかけに,彼は最後に一つの新しいパースペクティブを得る.彼が見出したその新たな「展望」は,良い方向に働くかどうかはわからないけれど,僕がチェスターの歌声を聴いて得たその広大な「展望」は,確かに僕の世界を拡張した.それだけは確かだと思う.