ローマからの贈りもの──ブルガリと私
私とイタリアとの縁は、いつもどこかロマンに満ちていた。
中でも、ローマの宝石商ブルガリとの出会いは、私の美意識の根底に触れるものであった。
最初に私の心を掴んだのは、ブルガリが展開するローマコイン・コレクション。
悠久の時を超えたコインに、永遠の命が吹き込まれているような感覚があった。
その瞬間から、私は自然とブルガリのジュエリーを集めるようになった。
けれど、いつからか心が動かなくなっていた。
どれほど美しいジュエリーであっても、私の中に“ときめき”が宿らない。
唯一、母から受け継いだピンクダイヤのイヤリングだけが、静かに私の日常に寄り添っていた。
そんな中、ある日ふとしたご縁で、ローマから一つのジュエリーが私のもとにやってきた。
ブルガリのエメラルド。
それはまるで、私の中の沈んだ魂に光を投げかけるような、特別な存在だった。
見た瞬間、胸の奥深くからふるえるような感動がこみ上げた。
デザイン、カット、石の持つエネルギー、そのすべてが、私に新しい息吹を与えてくれた。
本来は投資目的でやってきたものだった。
でもそれは、まるで“今”の私を選び、そっと寄り添ってくれるために舞い込んできたかのようだった。
ちょうどその頃の私は、深い落ち込みの中にいた。
自分の選択、自分の在り方に、自信をなくし、言い訳と後悔を繰り返していた。
何もかもがうまくいかない、どこへ向かっているのかもわからない——
そんな暗がりの中で出会ったエメラルドは、私に「まだ終わっていない」とそっと囁いてくれたようだった。
ただの宝石ではない。
それは、私とローマ、私と母、そして私自身との再会をつなぐ、**“記憶の結晶”**だったのだと思う。