そらにみつ ~天満~-ウサ子

※ウサ子とは私が飼っているニューハーフうさぎのことです。


何年か前のことである。

祖母が病気になり、実家に帰ることに。
ウサ子も一緒に連れて行くことにした。

ウサ子、初フライト。

相当、ひびったらしい。
ケージ以外では絶対にお○っこをしないウサ子がキャリーでお漏らし・・・。


実家についたら・・・。
かなりご立腹のご様子。

少し、落ち着いた頃、ケージからだしたら・・・
速攻、ソファに飛び乗り、シャーっ !!!

一瞬の出来事だった。
実家のソファもお亡くなりに・・・。合掌。
(去勢した日、私の家のソファもお亡くなりに・・・。)


しかし、ウサ子は実家の素晴らしさにすぐ気付く。
私が中心の生活から、自分が中心の生活に移行したことに。

「なーんだっ。口うるさいのは主だけじゃん~。
世の中の人間は、皆、俺様にアマアマじゃん~。」

2日目からは我が物顔で過ごしていた。

実家では、
毎日爆走し、
毎日オヤツを山ほど食べ、
毎日悪さして、
楽しく過ごしていた。

徐々に態度がでかくなり、わがままになっていく。
(私の存在に気付くと、姿勢をただし、いい子ぶるのだが・・・・。)

従順な可愛いウサ子は完全に死んだ。
新生、生意気ウサ子。

実家に孫を連れ帰ったら、甘やかされてダメになったという話をよく聞くが、
ウサギでかよ・・・。

いくら言っても、父も母もダメ。
もうアマアマ。

ウサ子もずるい。
どうやったら、オヤツを貰えるか熟知しているのだ。

父はチンチンが好き。
母は膝に乗るのが好き。
人に合わせて、ねだり方を変えていやがる。

ウサ子はグラビアアイドル並に自分が可愛く見えるポーズを知っている。
私が激怒している時の可愛さったら、ねーよっ!!
頭にくるくらい・・・。
いつもウサギ様に完敗・・・。

よく、ウサギを飼った人は「ウサギは賢い」というけど、
それは「うちのワンちゃんとってもお利口さんなの~」というのとは大分違う。
どちからと言うと「ずる賢い」「何をするか分からない」というニュアンスのように思う。



私の実家はド田舎である。

村中、どこの家にも鍵はない。
そして、お互いの家の事情に精通している。

害獣としてウサギを駆除する地域でもある。
食用としてウサギを飼っている家もあった。

ウサギをわざわざ連れて帰った物好きとして、私は村で話題の的に。

近所のおっさんに聞かれた。
「おまえ、草、どーしてんだ?」
質問の意味が分からない・・・。
「都会は、草、生えてないだろう?」
いやぁ、私もすっかり都会人になってましたよ。
そーです。
ウサギの餌の草は自分で収穫するものでした。
草を買っていると言ったら、非常に驚かれました。

違うおっさんがウサ子を見に来た。
(田舎は暇人が多いのである)
「美味しそうだなぁ・・・。」
そーですね・・・。
ウサ子は食用です。
そのおっさんの友人がロップイヤーを飼っていて、仲間で食したことがあるとか。
「耳の垂れているウサギは旨いんだ。」

またまた違うおっさんが。
彼は畜産を営んでいた。
「タマなら、ただで取ってあげたのに。豚も牛も大得意っ!」
・・・・・。
去勢したことまで知れ渡っていたか・・・。

近所のおばさんがやってきた。
「昔、アンゴラウサギ飼っていて、毛を取って売っていた」
ウサ子の換毛期の毛をとっとけば、ウ毛布団作れたな。


ロップイヤーは元々食用。
レッキスは毛皮用。
アンゴラは毛糸用。

ウサギって家畜だったと実感する実家での日々だった。




ウサ子は、実家から帰る時に、抵抗する。
移動用のキャリーを見ると、ケージに立てこもる。
無理矢理出すのだが、けっこうな力だ。2kgのくせに。
「絶対に入らないっ!!帰らない!!」といわんばかりで、踏ん張る。

反対に実家に帰る時は自分から、キャリーに入る。
雰囲気で理解するらしい。

一度、衣替えでごそごそしていて、
キャリーを出しっぱなしにしていたら、
ウサ子は自らキャリーに入った。
実家に帰る準備をしていると勘違いした模様。
「さぁ、行きましょうっ!」って感じでキラキラした目で私を見つめた。

ウサ子、期待させてごめん・・・。
帰らないんだよ・・・。

しばらくキャリーの中で暑苦しく過ごしていたウサ子であるが、
十数分で諦める。
早っ。

そして、ケージに入ると、私にお尻を向けて、不貞寝。
(お尻を向けるは、ウサ子的不機嫌のサイン。)


どんだけ実家が好きなんだ、と思うと悲しくもなる。
しかし、私の都合で実家に預かってもらうには、悪くは無い。

実家にウサ子を預けている時は、
私は私の部屋にいるだけと思って、
ウサ子は探し回ってはいるらしい。

基本的にウサ子にとっては、私がいて、ケージがある場所が自分の居場所なのだ。

わがままで、憎たらしいけど、私にとっては無くてはならない存在。
一応、ウサ子にとってもそうらしい。