(レムリアム7からの続きです)

 

 北極星は今後、ケフェウス座へ移行する。西暦3100年頃にはこの星座のγ星が、また西暦5100年頃にはβ星が北極星になる。さらに西暦7500年前後にはα星が天の北極に3度まで近づいて北極星となる。

 



 ケフェウスとは如何なる人物なのか?ギリシャ神話ではケーペウスともいう。エチオピアの王で、カシオペアの夫、アンドロメダの父。ちなみにエチオピアとは、今日のエチオピアではなく、地中海の南東岸、現在のイスラエルからヨルダン、エジプト付近全体のことを指す。


 ケーペウスはアンドロメダを生贄にした。彼はフェニキアの王という説もある。フェニキアといえばバアル崇拝で、生贄は欠かせないが、古代イスラエルも元々そうだった。そして、生贄のアンドロメダはペルセウスに救われ結婚。息子をエチオピアに残すのだが、この息子がペルシア人の祖になったという。

 ヘロドトスの伝えるところでは、アケメネス朝の王クセルクセス1世はギリシアとの戦争の前にペルセウスの祖国アルゴスに使者を派遣し、自分はペルセウスの子ペルセースの子孫であり、我々は同族同士であるためお互いが戦うことがないよう自国から動かないことを求めたという。実際、アルゴスはペルシア戦争参加を拒否している。

 アルゴスはペロポネソス半島の東北部にあった都市国家である。そこには「百眼の巨人伝説」が残る。ああ、あれか!ウィッシュボーン・アッシュの名盤を思い出す。

 



 百眼の巨人アルゴスは、神々の命を受け、上半身は人間の女で腰から下は蛇の形をしていた怪物エキドナやアルカディア地方を荒した雄牛の怪物を退治するなど、多くの手柄をあげた。

 

 蛇と牛。欠かせないシンボリズムだね。

 アルゴスは百眼なので死角がない。ヘルメスは笛を吹いてアルゴスを眠らせ百眼をふさぎ討取ることに成功する。ヘラはアルゴスの死後、その目を取って自身の飼っているクジャクの尾羽根に飾った。それ以来、クジャクは尾羽根に百の目を持つという。

 ここでふとクエスチョンがよぎる。ギリシャにクジャクは生息しているのか?
クジャク(孔雀)はキジ科の鳥類で、中国から東南アジア、南アジアに分布するクジャク属2種とアフリカに分布するコンゴクジャク属1種から成る。通常クジャクといえば前者を指す。コンゴクジャクはアフリカのコンゴ盆地に生息しているが、派手な尻尾はついていない。だから、こいつはアルゴスではない。

 



 クジャクといえばインドクジャクが有名。インドの国鳥で益鳥として尊ばれ、ヒンドゥー教のスカンダ、仏教の孔雀明王、クマラ天の乗物、クルドのマラク等、ゴッドサイダーな扱い。つまり、アルゴスの伝承にはアフリカではなくアジアが深く関係している。アジアといってもインドより西。クルド人はミタンニの末裔だったはずだし、隣り合わせのヒッタイトなんかはギリシャと目の鼻の先。


 さらに、中東辺りで巨人アルゴスの百眼パワーに匹敵するのはメタトロンではなかろうか。
メタトロンはユダヤ教の天使で、その姿は世界の広さにも等しい長身で、36対の翼と無数の目(36万5000との説も)を持つ「炎の柱」として表され、小ヤハウェとも呼ばれる。もはや神。

 そのメタトロンとアルゴスは同じ神をモチーフにしている気がしてならない。

メタトロンの異称はミトロン。ペルシャ起源の東方神「ミトラ」に関係しているのではないだろうか。

ミトラ神は中世の神学では特に司法神としての性格が強調され、千の耳と万の目を以て世界を監視するとされる。また、契約の神、長身、無数の目を持ち万人の監視者であるといった属性がメタトロンを想起させる。

 しかし、ギリシャのアルゴス市の地名の由来は百眼の巨人アルゴスではなく、その祖祖父にあたる人物のようである。その"名祖"アルゴスはニオベーとゼウスの子。ニオベーはゼウスが愛した最初の女性で、ポローネウスの娘。ポローネウスはペロポネソス半島原初の王。

 

(アテネがあるのがギリシャ本土)

 ギリシャ人と一口に言っても、アーリア人が東から侵入し先住民と混じり合っている。ポローネウス〜アルゴスの系譜も、ペルセウスの子孫であるペルシア人も、アーリア系という根っこの部分では繋がってくる。

 

 ちなみに、アルゴスの父はアゲーノールというが、フェニキア王にもアゲーノールさんがいる。

フェニキア王のアゲーノールは、エジプト王エパポスの娘リビュエーとポセイドーンの子で、ベーロスと双子の兄弟。子供にポイニクス(ギリシャ語のフェニックスと同じ)や、エウロペー(ヨーロッパの語源)らがいる。双子のベーロスの子の1人が最初に触れたケーペウスである。

 ついでに、アゲーノールの母のリビュエーはリビアの語源。リビュエーの父はエジプト王エパポス、母はメンフィス。エパポスの母イオはアルゴスでヘラに仕える女神官だったが、ゼウスに愛されたので牡牛に姿を変えさせられギリシャからエジプトまで逃避行したという。

 不思議なのは、エジプト王やフェニキア王はギリシャ神話に出てくるのに、古代イスラエルの話は出てこない。

フェニキアは今のレバノンだからイスラエルなんて隣りだというのに。
元祖歴史家ヘロドトスがそこをスルーしなければ、世界は今と違っていたかもしれない。
彼がスルーしてしまったが為に、後世の人々は聖書の歴史を信じる他なかったわけだ。

 余談だが、ゼウスは「スケコマシ」で有名だ。神であれ人間であれ御構い無しにたらしこんでいるのだが、その「方法論の違い」については軽んじられているように思う。
神のファックは人間のそれとは違うという点。必ず何かに変身してやる。ペルセウスの母ダナエーとの交わり方は凄い。ダナエーがヤったのは「黄金の雨」である。これについては色んな画家が描いている。

http://eureka-merl.hatenablog.com/entry/2016/08/13/125041


西洋絵画だと「黄金の雨」は、なかなか神秘的な現象になる。
個人的にまず絵に浮かんだのは、雑誌の通販広告で札束の風呂に入ってるアレなんだが・・・。

 ゼウスの異種交配神話の意味するところは何か?少なくとも2つの解釈が成り立つ。
ひとつは、各ギリシャ王朝の王権神授説を補完する役割である。諸ポリスが乱立する古代ギリシャの王族らは、こぞって最高神ゼウスとの関係を強調することで、ロイヤリティを高めたことだろう。
もうひとつは、原ギリシャ人の母系社会に、アーリア人の父系社会が入っていったと読みとれる。父系の象徴である父なる神ゼウスが土着の女神や王女と交わっていくストーリーであると。

 女神ではないが、ゼウスの兄ポセイドンは、元々ペラスゴイ人の崇めるローカルゴッドだったそうな。ペラスゴイ人はギリシアの古代先住民族で、初めエーゲ海周辺に住んでいたらしいが、青銅器時代のギリシア語諸族の侵入によって土地を追われ、トラキア、アルゴス、クレタ、カルキディケなどに散在したらしい。
 また、オリンポス原初の支配者であるオピオンは、クロノスと力比べをして負けたのでオリンポスを明け渡している。オピオンは名にオピス(蛇)の語を含むため、蛇の神と考えられている。
ほう、大国主と同じストーリーではないか。しかも、大国主と同一神とされる三輪山の大物主は蛇神である。

 こうした各地に残る神話の類似性は伝播したのか共時性から偶然似通ったのか?人間の行動心理から類似の文化様式に辿り着いた可能性はある。だが、世界地図を持たない大昔、方々に散らばる民に共通の尺度を与えたものがひとつある。

 それは天球だ。

 天球の星々と神の因果関係を描いたのは古代バビロニア人。彼らの天文学は国家や王家の吉凶を占う占星術となり、やがてギリシャ人が個人の運勢を占うホロスコープへと発展させる。ヘレニズムの頃、少なくともギリシャからインドまで天球の神話は類似どころか同じ物語を共有していたのである。
 

 そして現代、星占いの人気は未だ衰えないし、新しい神話の門出に我々は直面している。アセンションの神話へと物語はこのあとも続く・・・