今回は、日本地名研究所の所長だった
谷川健一の著書「続日本の地名」より
鼠の地名を紹介したいと思います。

 

「鼠はもともと不寝見(ねずみ)のことであり、

不寝番の役人が見張る番所の意味である、

と一志茂樹は唱えている。(「地方史の道」)。


語呂合わせのようだが、鼠地名のうち、

いくつかの例に限っていえば、

その説が妥当であることが証明される。


長野県北安曇郡松川村鼠穴も古代の「不寝見」、

すなわち見張りに由来しているという説がある。

 

この村の西方に大岩石が露出しているところがあり、

そこが鼠穴城といわれる。

付近を千国(ちくに)道と呼ぶ古道が通じていたようだという。

(日本歴史地名大系「長野県の地名」)。

 

新潟県から山形県に入ると、

県境の海岸沿いに鼠ヶ関(ねずがせき・山形県西田川郡温海町)がある。

山が迫って平地の乏しいところで、弁天島の向こう、

日本海に沈む夕日が美しかった記憶がある。


十一世紀の「能因歌枕」に「ねずみの関」と記されており、

歌の名所でもあった。「義経記」には「念珠の関」とあり、

義経主従もここから出羽の国に踏み入った。
この鼠ヶ関の地名も不寝が関ということで理解できる。

 

 

 

口絵は東京麻布の”鼠坂”ですが、ここの由来はわかりません。
見張るほどの理由はないように見えましたが(笑)
ちなみに森鴎外の小説「鼠坂」は文京区小日向です。

 

(港区麻布狸穴町)