実はアメブロというのは賢くて、アクセス解析というのをやってくれております。
アクセス解析の内容はIPは含まず訪問者数やOS・ブラウザの情報などですが、その中に検索ワードというものがあります。
GoogleやYahooを経由して当ブログにいらっしゃった方が、どのような検索をしてきたのかというものです。
その検索ワードで昨日急増したものがありました。
「訴因変更」
です。
TheJournal に郷原信郎氏の訴因変更の記事が掲載されたことにより、訴因変更の検索をしている人が増えたのでしょうか?
しかし、郷原氏の記事は専門家ゆえに少々冗長かなという気がしますので、勝手に解釈して短くまとめてみようと思います。
【原則】
大久保秘書の場合、西松事件が平成16年の収支報告書の虚偽記載として起訴されているので、土地取引に関する虚偽記載容疑のうち同じ平成16年の収支報告書を証拠とする部分のものは、追起訴できず訴因変更するしかない。
【ところが】
西松事件は単独犯、土地取引に関しては石川・池田両氏との共謀ということで問題があるらしい。
(刑事訴訟法312条 の公訴事実の同一性を満たさない可能性があるのかな?)
【そこで】
検察側は西松事件の方を3人の共謀とし、さらに土地取引に関する内容を追加する形での訴因変更で解決しようとした。
【しかし】
西松事件は公判前整理手続きが行われており、手続き後の「単独犯->3人の共謀」の訴因変更は認められない。
(H20/11/18 東京高裁 の判例による)
【結局】
西松事件を大久保氏の単独犯に戻し、単純に土地取引に関する容疑を追加するだけの訴因変更に修正した。
【現在】
裁判官による訴因変更可否の判断待ち中。
という話だと思います。
間違っていたらごめんなさい。
ここから先は私個人の意見ですが、裁判官は訴因変更の時期的限界(S51/04/05 福岡高裁那覇支部 )も問題視しているのではないかと考えております。
西松事件は、結審段階とは言えないものの、検察側証人の証言により大久保氏の無罪がほぼ確実なものとなっておりました。
この段階での訴因変更であれば、やはり特捜部の自己保身による無罪回避のための捜査・起訴の可能性が疑われ、簡単に訴因変更を認めるわけにはいかないのではないかと思っております。
(検察側証人が大久保氏に有利な証言をした当日に土地取引に関する強制捜査を行っていることからも特捜部の自己保身的捜査・起訴が疑われております。)
一方、訴因変更が却下されれば平成16年部分の土地取引に関する虚偽記載の件は大久保氏だけ早々に無罪が確定するという結果になりそうな気がするのですが、これでまかり間違って他2人が有罪になってしまうことがあれば、これも奇妙な話です。
将棋の羽生善治名人が
「ミスはミスを呼び、悪手は悪手を呼ぶ。プロがミスをしないのは、ミスしにくい局面を選択しているからなんです。」
という言葉を残しておりますが、特捜部は西松事件と言う悪手を打ち、その悪手が次の悪手を呼び、訳わからない局面にしてしまったというのが現状のようです。
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刑事訴訟法312条
『裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
2 裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。
3 裁判所は、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更があつたときは、速やかに追加、撤回又は変更された部分を被告人に通知しなければならない。
4 裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞があると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防禦の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。 』
東京高裁 平成20年11月18日判決
『公判前整理手続は,当事者双方が公判においてする予定の主張を明らかにし,その証明に用いる証拠の取調べを請求し,証拠を開示し,必要に応じて主張を追加,変更するなどして,事件の争点を明らかにし,証拠を整理することによって,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行うことができるようにするための制度である。
このような公判前整理手続の制度趣旨に照らすと,公判前整理手続を経た後の公判においては,充実した争点整理や審理計画の策定がされた趣旨を没却するような訴因変更請求は許されないものと解される。』
福岡高裁那覇支部 昭和51年4月5日判決
『検察官が、結審段階になって、それまで攻防の対象となっていなかった事実に訴因を変更する旨請求することは、それが公訴事実の同一性を害しないものであっても、著しく訴訟を遅延させ、被告人を長く不安定な地位に置くことによって、被告人の防御に実質的に著しい不利益を生ぜしめ、公平な裁判の保障を損なうおそれが顕著である例外的な場合には、許されない』