前回の記事は議決書に対して少々説明不足だったかと反省しております。


第一報で「起訴相当」と出た時、私は「新証拠でも出てきたのかな?」と思いました。


私は「起訴相当」とは「起訴すべき証拠がそろっている」と解するのが当然だと考えているからです。

「証拠は不十分であるが疑いがあるので再捜査をすべき」なら「不起訴不当」が妥当だと思っております。

従って、私は以前「せいぜい不起訴不当」と書いたわけです。


どのような新証拠が出てきたのかと興味を持って議決書を読むもあまりに酷い内容にあきれ返った次第で、おそらく多くの法曹界の人間や法律を学んだことがあり法律関係の論文(論文試験含む)を書いたことがある人間は同様の意見を持ったはずです。


例えば

『被疑者はいずれの年の収支報告書においても,その提出前に確認することなく担当者において収入も支出も全て真実ありのまま記載していると信じて了承していた旨の供述をしているがきわめて不合理で不自然で信用できない。』

もし起訴となった場合、起訴状ではこのような記述はできません。


○月×日▲▲事務所において小沢氏が虚偽記載を命じた~などと最低限分る範囲で記述することが求められ、

「きわめて不合理で不自然で信用できない」

といった、単なる主観では判断のしようがありません。


「きわめて不合理で不自然で信用できない」

の理由として、

『(1)被疑者からの4億円を原資として本件土地を購入した事実を隠蔽するため,銀行への融資申込書や約束手形に被疑者自らが署名,押印をし,陸山会の定期預金を担保に金利(年額約450万円)を支払つてまで銀行融資を受けている等の執拗な偽装工作をしている。』

『(2)土地代金を金額支払つているのに,本件土地の売主との間で不動薄引渡し完了確認書(平成16年10月29日完了)や平成17年度分の固定資産税を買主陸山会で負担するとの合意書を取り交わしてまで本基記を翌年にずらしている。』

と状況証拠(?)が議決書に記載しております。


これらの点に関して事実の部分は

『(1)銀行への融資申込書や約束手形に被疑者自らが署名,押印をし,陸山会の定期預金を担保に銀行融資を受け、金利(年額約450万円)を支払っている』

『(2)不動薄引渡し完了確認書(平成16年10月29日完了)が取り交わされ、平成17年度分の固定資産税を買主陸山会で負担し、さらに本基記を翌年にずらしている。』

で残りの部分は言いがかりのようなものです。


(1)については「資金繰り」で終わる話ですし、(2)についても「忙しくて登記が遅れてしまった」と言われればお終いです。


これらが何らかの隠蔽工作であったと仮定して、どのような利点があるのかと思えば、

『(3)上記の諸工作は,被疑者が多額の資金を有しておると周囲に疑われ,マスコミ等に騒がれないための手段と推測される。』

としている。


つまり、

「マスコミに騒がれたくなかっただけの小沢氏が秘書に命じて違法な虚偽記載をさせた。」

というのが、検察審査員らの主張なのです。


おそらく裁判になれば裁判官は首を傾げて「意味がわかりません」と言うに違いありません。

この状況証拠(?)に説得力を持たせるためには

「さらなる重大犯罪を隠蔽するために虚偽記載を命じた」

とし、「さらなる重大犯罪」の証拠と「小沢氏が命じた」という証拠を示すこと以外にはありえません。

そこまであれば、「起訴相当」でしょう。


議決書のそれ以降の部分は客観証拠がゼロで議論にすら値しません。


この議決書を含め一連の小沢氏報道を読むと「魔女狩りだな」と感じてしまいます。

法治国家なら法と証拠に基づく判断が求められ、それは司法関係者であっても素人市民であっても同じことです。

ヒステリックに「怪しい奴は吊るし上げろ」というのは魔女裁判となんら変わりありません。


魔女狩りの時代、ある異端審問官は正統か異端か疑わしい者がいたときにはどうすればよいかという問いに

「みんな殺せ!なぜなら、その判別はあの世で神がなしたもうからだ!」

と答えたそうです。



参考

議決書:弁護士阪口徳雄の自由発言

魔女狩り:魔女狩りと異端審問の歴史


結局長々と書いてしまいました。