最近田中良紹氏白川勝彦氏 などがマニフェスト選挙について疑問を呈しているようです。

お二方のブログを読んで理解できる部分半分、そうかな?と首をかしげる部分半分です。


まず、マニフェストとはどのようなものかということを考えてみます。

イギリスのマニフェストを規範として様々に定義している方がいらっしゃるようですが(上記お二方ではありません)、日本のマニフェストの定義をイギリスのマニフェストに求めるのは本質を見失うことになると思います。


(当選して議員になれば当選は単なるスタートラインですが、)候補者にとって究極の目標は当選です。

マニフェストとは、その究極の目標を成し遂げるための一手段でしかないと私は考えます。

つまりマニフェストとは有権者に対する単なるプレゼン資料のひとつでしかないということです。

「イギリスはこうだから、このような内容にすべし。」

という意見はおかしく、国によってウケる内容は異なるのですから、日本人は日本人にあったマニフェストを出せば事足りるのではないでしょうか?

「マニフェスト」ではなく「日本版マニフェスト」と呼ぶべきかもしれません。

ただしプレゼン資料である以上その体を整える必要はあります。


選挙において、候補者は有権者ひとりひとりに対し一票をお願いします。

有権者はわざわざ投票所まで足を運んで特定の候補者に一票を投じるわけですから、その人に投票するそれなりの根拠が必要になります。

今の時代であれば投票する根拠は「自分自身のよりよい生活」でしょう。

国民の「よりよい生活」を約束するものが「公約」です。

(ただし、今のよりよい生活を考えるのか、将来または子や孫のより良い生活を考えるのかは人それぞれです。)


野党であれば、政権交代をすればどれだけ素晴らしい国になるのかを有権者に説きます。

そのとき良いプレゼン資料になるのが「マニフェスト」です。

1.目的・目標

2.定義

3.現状認識・問題点の提起

4.解決法(行程はここに含まれる)

5.効果

6.費用

7.財源

程度を書けば、有権者も政権交代後の自分の生活をイメージしやすくなります。


一方与党が有権者に訴える際、最大の武器は「実績」です。

プレゼンの手法としてマニフェストを利用するのであれば、与党は実績を訴え政策の継続をマニフェストに掲載すべきです。

その際、以前のマニフェストとダブっても良いので上記1.~7.は洩らさず記載し、さらに継続であれば進捗状況を、新規であればその旨記載することが望ましいでしょう。

また、やむを得ず政策変更をする場合は、3.の問題点を明示し、政策変更をする理由を明らかにする必要があります。


また有権者が与党を評価するときは、

一.過去4年の評価

二.政策の変更に対する評価

三.政策の継続に対する評価

四.新規の政策に対する評価

の順に評価すべきです。


まず一.今任期中(今回であれば小泉内閣~麻生内閣の4年間)の与党の評価を下します。

評価は二種類で

A.前回マニフェストの達成度の評価

B.政策自体の評価


A.が不合格ならば問答無用で与党へ投票すべきではありません。

B.が不合格ならば前回選挙時の与党の説明が出鱈目であったということなのでこの場合も与党へ投票すべきではありません。

責任はきっちり取ってもらうべきです。


次に二.政策変更。

政策変更に妥当性があるのかが判断基準です。

例えば世界経済の情勢が急激に変化してしまったための政策変更であれば、ある程度有権者も納得するでしょうが、「政策が間違っていたからもう一回チャンスを」というのは有権者が許さないでしょう。

この場合も与党へ投票すべきではありません。


そして、三.政策の継続の評価。

本当に継続すべきかを判断します。


最後に四.新規政策の評価。


三.、四.については野党マニフェストとの比較になります。


一.、二.に合格して初めて野党のマニフェストとの比較になるのです。


私は、これまで何度か「マニフェスト選挙はまず前回の検証から」という内容の文を書きましたが、検証を行い落選させるべきは落選させるような選挙戦にならなければ、約束が守られることは絶対にありません。

従って与党に対して見方がより厳しくなるのは当然です。


しかし、与党の過去4年が評価されさえすれば、日本人の悪い所なのでしょうが二.~四.も無条件で好評価に傾きがちになるということを考えれば、仕事をしさえすれば与党が有利とも言えます。


野党のプレゼン道具は「マニフェスト」であり、与党のプレゼン道具は「実績+マニフェスト」なのです。

もちろん現在の公職選挙法の範囲内で別のプレゼン方法があるならばそれを使えばよいでしょうが、少なくとも昔の選挙公約が有効なプレゼン方法とは私は思いません。


さて、今回の選挙を考えた場合自公政権この4年の評価はどうでしょうか?

少なくとも二.~四.が無条件で好評価になるほどの評価は得られないでしょう。


そうであるならば、何度も指摘しているように

「自民党のマニフェストは今のような中途半端なものではいけない。」

のです。

余計なお世話ですが、あのようなマニフェストであれば、自公支持者さえそっぽを向くのではないでしょうか?


一方で民主党のマニフェストは自民党のものよりは遥かにマシですが100点というわけではありません。

さらに上を目指すには「良い政策とは何か?」が鍵なのかもしれません。


私が考える「良い政策」とは…、

気が向いたら書きましょう。