昨日の自民党が発表した「政策BANK」なるもの。
まさかマニフェストではないですよね?
内容から見て民主党で言うところの「民主党政策集2009」と対比させるべきでしょう。
民主党の場合は「民主党政策集2009 」と「Manifesto 」の両方を合わせ見ることで一つのマニフェストとみなすべきと思いますが、自民党の場合は今のところ「政策BANK 」しか発表させれおらず、これをマニフェストとみなしてよいのか不明です。
私が考えるマニフェストのフォーマットというのは、
1.目的・目標
2.定義
3.現状認識・問題点の提起
4.解決法(行程はここに含まれる)
5.効果
6.費用
7.財源
実は、マニフェストに限ったフォーマットではなく、みなさんが会社で行うプレゼンや我々学生が書く論文やレポートあるいは特許なども6.7.を除けば概ねこのようなフォーマットで書かれているはずです。
全て必要というわけではなく、例えば単に法律を作るだけであれば6や7は外れることになります。
また、2.は必要な場合、5.は特記事項がなければ1.と同じ文章になるため、敢えて示さないという選択をすることもできます。
順番やまとめ方は自由で、一文にするもよし、箇条書きにするもよしです。
例として、民主党の「政策集」の最初の政策『「内閣」の「NPO活動の促進・支援税制」』を見てみます。
『特定非営利活動法人をはじめとする非営利セクター(NPOセクター)の育成は緊急かつ重要な課題であり、公益法人制度の見直しとあわせて、これらの活動が社会にしっかりと根付くための努力を続けます。現行の特定非営利活動法人に対する支援税制については、認定要件が厳しいために、これを利用することができる「認定特定非営利活動法人」は特定非営利活動法人全体(約3.8万法人)の中でわずか95法人にすぎません(2009年7月1日現在)。認定NPO法人制度を見直し、寄附税制を拡充するとともに、認定手続きの簡素化、審査期間の短縮などを行います。
国際NGOについても、その活動を積極的にサポートする努力を続けます。』
赤は1.目標、青は3.現状認識、緑は4.解決法、紫は内容不明。
(国際NGOについては具体性が乏しい。)
5.は1.の前半と一致するため省略されているとみられる。
6.、7.についてはこの政策により減税になるはずなので税収減がどの程度になるのかの試算ぐらいは欲しい。
「政権政策集」ではなく「Manifesto」の3ページ「上記以外の政策」に必要な費用に含まれるのかもしれないが、はっきりしない。
この点対応をはっきりさせていただきたい。
この政策については6.、7.が示されて100点満点中80点。示されず60点で一応及第点。
一方自民党の「政策BANK」を見てみます。
同じく最初の政策『「安心」の「1安心な国民生活の構築」の「国民の安心安全のための社会保障制度の確立」』を見てみます。
『年金、医療、介護等の社会保障制度について、少子高齢化が進展する中にあっても暮らしの安心を支えるセーフティネットとしての機能を果たし将来にわたって国民にとって安心、信頼できるものとなるよう、社会保障制度の一体見直しを進める。
社会保障番号・カードを2011年中を目途に導入し、年金をはじめとする社会保障サービスの信頼性と透明性を向上させる。また、社会保障制度を真の国民の立場に立って検討をする場として「社会保障制度改革国民会議(仮称)」の設置に向けた法整備を進める。』
一応色分けしてみたが、本当はこのように立派に色分けできる文章ではありません。
一見政策のように見えますが、ぐちゃぐちゃしており何を言いたいのかわからない。
自民党の「政策BANK」は全体的にぐちゃぐちゃしていて、意味不明な内容が多いのです。
もし、皆さんが会社のプレゼンでこのような発表をすれば、あるいはこのようなプレゼンを聞かされたらどうなるかを考えてみてください。
黄は5.効果です。
甘めに採点して20点。当然落第点。
私が与えられた材料を使って敢えて書くとしたら、
『社会保障制度の一体見直しを進め○○を達成する。少子高齢化が進展する中、年金、医療、介護等の社会保障制度は暮らしの安心を支えるセーフティネットとしての機能を果たせなくなってきており、またそのため年金をはじめとする社会保障サービスは信頼性を失ってしまっている。社会保障制度を真の国民の立場に立って○○を検討をする場として20××年までに「社会保障制度改革国民会議(仮称)」の設置、20□□年までに達成する。また社会保障番号・カードを2011年中を目途に導入することにより、透明性を向上させ信頼性回復に努める。』
というところでどうでしょう。
また財源や費用については別枠でまとめて書いてもよいし
「この政策において△△円の費用が必要となり、消費税増税▽▽%分を当てる。」
の一文を加えてもよい。
水色が費用で黄緑が財源です。
上の文章にも「○○」などの記号を使っておりますが、自民党の政策には具体性が欠けてているものが多く政策と言えないものばかりです。
私のマニフェストのフォーマットが全てとは思いませんが、国民との約束なのですから、読む人の立場を考えて作っていただきたいものです。
私は、一昨日の記事「前回のマニフェストの評価の差異 」で自民党のマニフェストは「マニフェストですらない」 と言っておりますが、なぜそのように評価しているか理解していただけでしょうか?
問題点はこれだけではないのですが、長くなるのでひとまずここまで。
続きを書くのかは気分次第です。
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最後に各メディアに苦言。
メディアは政策の内容の議論を進めようとしておりますが、自民党のものは政策でなはいのだから比較の対象になり得ません。
自民党は具体性ゼロの政策らしきものを示して白紙委任状を得ようとしているのです。
メディアは、政策論争という誤魔化しをやらず、まず自民党に国民との具体的約束を示すよう促すキャンペーンをすべきです。
また各政策について、できるかできないかを議論するのはナンセンスで、できなければ次回有権者が投票しないだけです。
マスコミが判断するべきものではない。
マスコミがすべきは、まずは前回のマニフェストの検証であり、「できる・できない」ではなく、「できた・できなかった」です。