問題となってる点を見てみます。
資金管理団体は~であるとか、国会議員関係政治団体の場合は~であるとか色々項目はあるのですが、要は政治資金規正法12条1項1号にある収入の報告をしなさいということが書いてあります。
政治資金規正法第12条1項1号
『政治団体の会計責任者(報告書の記載に係る部分に限り、会計責任者の職務を補佐する者を含む。)は、毎年十二月三十一日現在で、当該政治団体に係るその年における収入、支出その他の事項で次に掲げるもの(これらの事項がないときは、その旨)を記載した報告書を、その日の翌日から三月以内(その間に衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の公示の日から選挙の期日までの期間がかかる場合(第二十条第一項において「報告書の提出期限が延長される場合」という。)には四月以内)に、第六条第一項各号の区分に応じ当該各号に掲げる都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に提出しなければならない。
一 すべての収入について、その総額及び総務省令で定める項目別の金額並びに次に掲げる事項
イ 個人が負担する党費又は会費については、その金額及びこれを納入した者の数
ロ 同一の者からの寄附で、その金額の合計額が年間五万円を超えるものについては、その寄附をした者の氏名、住所及び職業、当該寄附の金額及び年月日並びに当該寄附をした者が第二十二条の五第一項本文に規定する者であつて同項ただし書に規定するものであるときはその旨
ハ 同一の者によつて寄附のあつせんをされた寄附で、その金額の合計額が年間五万円を超えるものについては、その寄附のあつせんをした者の氏名、住所及び職業並びに当該寄附のあつせんに係る寄附の金額、これを集めた期間及びこれが当該政治団体に提供された年月日
(以下略)』
「新政治問題研究会」、「未来産業研究会」については、寄附収入はなく党費または会費を徴収しているのでイが該当し、「陸山会」に関してはロが該当します。
法によると記載すべき団体名は間違いなく「新政治問題研究会」、「未来産業研究会」です。
前回献金の構造を3つに分割しました。
1.西松建設→従業員
2.従業員→2つの政治団体
3.政治団体→陸山会
このうち大久保被告が関係あるのは3.だけですが、陸山会として収支報告をする場合「新政治問題研究会」、「未来産業研究会」以外の名前を書いてはいけないということが、第12条には書かれています。
この件を違法へ持っていくためには、郷原信郎氏が挙げた要件が必要となります。
「政治団体がなんら実態の無いダミー団体で、しかも寄付を受け取った側がその事実を明確に把握していたことが立証されない限り、政治資金規正法違反とは言えない」
私もこの意見を支持しております。
話が飛びすぎているので、順を追って話します。
この事件の構造は
西松建設→従業員→2つの政治団体→陸山会
です。
確実に違法にするためには、企業から政治家個人の資金管理団体へのお金の流れ、つまり「西松建設→陸山会」の構造を作り出さなくてはなりません(政治資金規正法第12条および第22条の2違反へもっていくため)。
つまり、この構造から従業員と政治団体の部分が削除できることが条件になります。
政治団体を削除するためには、この団体が法律上の政治団体ではないことを証明すれば足ります。
ここで事実上ではなく法律上としたのは、「事実上のダミー政治団体」でよしとした場合、恣意的解釈が成り立ち政治団体をダミーとみなすための要件が確定できなくなります。
ダミーとみなす要件に複数説が成立してしまえば「大久保被告がダミーであることを知りながら」に矛盾が生じ違法性を問えなくなります。
「法律上」有効ではない政治団体であることを証明することが必要十分条件です。
逆にいえば、この証明ができなければ間違いなく寄附元は政治団体であり、虚偽記載にはなりません。
従業員を削除するためには、従業員が会費を払っていないことの証明が必要でしょう。
いずれの場合も、形式上は正規の寄附ですから事実を知らなければ無過失となり違法性は問えません。
以上のことを簡単にまとめると郷原氏が述べた
「政治団体がなんら実態の無いダミー団体で、しかも寄付を受け取った側がその事実を明確に把握していたことが立証されない限り、政治資金規正法違反とは言えない」
になるわけで、私がこの論を支持するのも違法とするために必要十分な要件を満たした内容だからです。
もう少し詳しく見てみます。
以下の赤字は問題がある部分、下線部は大久保被告が関与しうる部分になります。
A.従業員部分が消滅
西松が知りながら直接政治団体へ寄附をした、すなわち
西松建設→政治団体→陸山会
となることから、政治団体へ違法寄附をしたことになります。
西松側の第21条違反、大久保被告側罰則なし。
B.政治団体部分が消滅
西松建設→従業員→陸山会
となり、悪意の証明ができないことから通常は修正してお終いのケースです。
そもそも個人献金は認められており、ダミーの政治団体を通すことを陸山会側から要請する意味がありませんから、当然にダミーであることを知らなかったと解されます。
政治団体に関して虚偽の届け出をしたことによる西松側の6条違反?または政治団体の解散の届け出を怠った17条違反?、大久保被告側罰則なし(ただし、ほぼ不可能だと思いますが、悪意の証明ができれば大久保被告側の12条違反)
C.従業員と政治団体が消滅
西松建設→陸山会
となり、西松側の6条若しくは17条違反?並びに21条違反、悪意の証明ができれば大久保被告側の12条並びに22条の2違反。
しかし、小沢代表が記者会見でしゃべったように西松から政党支部へ直接献金すれば問題がないのだから、悪意の証明は難しいでしょう。
(ちなみに善意は「知らずに」、悪意は「知りながら」の意味です。)
結局、違法であることの証明はB.の証明すなわち「新政治問題研究会」、「未来産業研究会」が法律上有効な政治団体ではないことの証明が最低条件となります。
ただし、有罪とするためにはC.の形を証明するしかないと思っております。
長くなりましたので、また次回。
最後に政治資金規正法第21条と第22条の2も記載しておきます。
第21条
『会社、労働組合(労働組合法(昭和24年法律第174号)第2条に規定する労働組合をいう。第3項並びに第21条の3第1項及び第2項において同じ。)、職員団体(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第108条の2又は地方公務員法(昭和25年法律第261号)第52条に規定する職員団体をいう。第3項並びに第21条の3第1項及び第2項において同じ。)その他の団体は、政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をしてはならない。
第22条の2
『何人も、第21条第1項、第21条の2第1項、第21条の3第1項及び第2項若しくは第3項又は前条第1項若しくは第2項の規定のいずれかに違反してされる寄附を受けてはならない。』
*法律を知っている方には第12条の「同一の者」の部分が気になるところと思います。
法律では「者」は個人または法人ですから、政治団体が「者」になるのかという疑問が生じるかと思いますが、政治資金規正法第9条1項1号ロに