性同一性障害で性別を変えた夫と嫡出子について | 第6の権力 logic starの逆説

性同一性障害で性別を変えた夫と嫡出子について

1月12日、千葉景子法務大臣が、性同一性障害で女性から男性に戸籍上の性を変えた夫の妻の子を嫡出子と認めるよう、早急に改善に取り組みたいと発言しました。

嫡出子は、夫婦の間の子ということです。

性同一性障害で性別を女性から男性に変えても、生物学的には女性のままです。したがって、生物学的には、夫と子の間に親子関係がないことは明らかです。

しかし、民法上の親子関係は、生物学上の親子とは別に定められることになっています。

(生物学上の親子であるという解釈も不可能ではないのですが、そうした解釈をとられている人はおそらく皆無です)

すなわち、法律上の親子と、生物学上の親子とは異なる、ということです。

そうであるならば、法律上の親子を示す戸籍について、生物学上の問題をもちだしている現在の法務省の見解がおかしい、ということになります。


しかし、他方で、DNA鑑定等で、生物学上の親子関係が容易に確定できるようになっていることから、現在の民法の規定を改正しようという意見もでています。

離婚直後に生まれた子は、法律上は、離婚前の夫の子と推定されるのですが、DNA鑑定などで親子関係を確定すべきだという意見が強く出されています。


すると、今回の法務大臣の意見は、法律上の親子を、生物学上の親子によって決定しようという、最近強くなってきた見解とは違う方向にあるということになります。

千葉法務大臣は、先ほど例にあげた離婚直後にうまれた子については生物学を重視して父と子の関係を決定すべきとのスタンスをとっていますので、政治的には、一貫性がないといわざるをえません。


性同一性障害への差別という感情的な問題ではなく、まずは、論理的、客観的に考える必要があると思います。


現在の法律では、生物学を考慮しないということが前提になりますので、性同一性障害で女性から男性に戸籍上の性を変えた夫の妻の子も、夫の子として、嫡出子とすることになります。


そのうえで、法改正、制度改正では、それでよいのかどうか、生物学上の親子関係で、法律上の親子関係も決定すべきかどうかを、政治の問題として考える、ということになるでしょう。

生物学重視の観点で法制度を改正すれば、性同一性障害で性別を女性から男性に変えた夫は、妻の子の父親にはなりえないということになります。

さらに、やはり法改正、制度改正の問題として、相続における非嫡出子差別をやめるかどうか、嫡出子と非嫡出子という区別をやめるかどうか、ということではないでしょうか。