派遣の雇い止め、内定取り消しや解雇者への対応について | 第6の権力 logic starの逆説

派遣の雇い止め、内定取り消しや解雇者への対応について

最近、企業の業績悪化が伝えられ、派遣の雇い止めが話題になっています。


急に仕事を失った派遣労働者の方は気の毒ですが、企業を一概に責めるのもどうかと思います。

企業は、まず正社員は解雇できない、正社員の解雇よりは派遣の雇い止めほうがしやすい、という判例(本当は「法制度」というべきなのですが、実際にそうした法律があるかといえばあやしいのです)があるために、派遣の雇い止めをしたということなのです。

もっといえば、こうした事態に備えて、正社員の採用を抑制して、派遣を活用してきたのです。

正社員の雇用確保を第一とするわが国の労働政策にしたがって、企業は合理的な行動をしたのです。


また、昨年は、新卒の採用は、近年にない売り手市場といわれました。

ところが、急に「不景気」の声が聞こえ、内定取り消しが話題となっています。


内定を取り消された方は、本当に気の毒ですが、企業を一概に責めるのもどうかと思います。内定取り消しをやめても、そのつけは、来年あるいは再来年の新卒者に採用減というかたちで回されることになります。その人たちが犠牲になるべきだ、という価値判断が絶対のものとはいえません。

企業は、まず正社員は解雇できない、正社員の解雇よりは内定取り消しのほうがしやすい、という判例(本当は「法制度」というべきなのですが、実際にそうした法律があるかといえばやはりあやしいのです)があるために、内定取り消しをしたということなのです。

内定を維持するために正社員を解雇してもよいとすれば、たぶん、企業は、可能性のある内定者を採用して、もっとも働きの悪い正社員を解雇したでしょう。この正社員は、雇用保険がありますし、このほうが合理的です。

もっといえば、採用が景気に左右されるのは、正社員を解雇できないからです。本当は、企業は、景気にかかわらず、働きの悪い正社員を解雇して、そのぶん採用を増やしたいはずです。しかし、それが許されないために、採用で人員の調整をせざるをえないのです。

やはり、正社員の雇用確保を第一とするわが国の労働政策にしたがって、企業は合理的な行動をしているのです。


正社員は、内定者や派遣労働者よりも手厚く保護されます。

しかし、別のエントリーにも書きましたが、すでに「一家に一人は正社員」という状況ではありません。

http://ameblo.jp/logic--star/entry-10185650634.html


これはアンフェアで不公平ではないか、そうまでして正社員を保護するということがわが国の発展にとってはたしてプラスなのか、ということを、考えるべきです。

(というのも、正社員の解雇が厳しく制限されるということは裁判官と労働法学者がつくりあげたものであり国会で議論されていないからです)


そもそも、もとから失業していた方もいます。こうした方々は、いっそう厳しい状況になるでしょう。

このような状況において、自治体等が、解雇された人に対して低い家賃で公営住宅を提供したり、自治体自身が臨時職員として雇用するといった対策を講じています。

(雇用保険と臨時職員との給料の関係を考えると、この臨時職員という対策の趣旨・効果は疑問であり、雇用保険加入対象外の短時間労働者しかメリットがありません。)

しかし、もとから失業しており就職がいっそう厳しい状況になった人たちは支援の対象外であり、特定の人に優先的に支援がなされることによって、こうした方々の立場はさらに厳しいものになります。

労働者の保護は、失業者の犠牲の上になりたっているのです。


わが国の労働問題は、厳格な正社員の解雇制限による終身雇用制度を抜きにして語ることはできません。


倒産する企業も出てきています。正社員は手厚く保護されますが、裏返すと、他の正社員が解雇されないということですので、いったん失業した人にとっては、再就職はたいへんに厳しいということになるのです。


正社員の雇用確保が第一だと考えるのであれば、こうした内定者、派遣労働者、失業者の不利益は、社会として想定された犠牲だというべきであり、このことで誰かを批判したり非難したりするのは一貫性がないと思います。