田母神航空幕僚長の論文問題について | 第6の権力 logic starの逆説

田母神航空幕僚長の論文問題について

田母神航空幕僚長の論文問題については、tadurabe様のブログ「人生いろいろ」でコメントをしたのですが、こんなに話が大きくなるとは思っていませんでした。現在の状況には問題があると思いますので、コメントの繰り返しになりますが、書いておきたいと思います。

http://ameblo.jp/tadurabe/entry-10159597762.html


結論から言えば、今回の田母神航空幕僚長に対する批判はおかしいと思います。


学術論文として書いた内容について、社会的な責任をとらせてはいけないと思います。

内容がおかしければ学術的な批判をすべきです。しかし、学術的な批判と、実生活での不利益とは、明確に区分しなければなりません。

学術であるなら、一般常識とどれだけかけ離れたことを書いても、それ自体は問題はありません。むしろ、歴史的発見や、天才の発明というのは、当時の一般常識とかけ離れたものです。ましてや他者の批判があるからと学術研究を規制することは許されることではありません。
ただ、問題は、自衛隊幹部が軍や戦争について勝手に書いたということです。これは、他国から、わが国の軍事行動を類推する材料になります。

次に、自衛隊幹部が軍や戦争について書いたにもかかわらず低レベルであったといわれていることです。しかし、それでも受賞され、公表されたということは、一定の価値があると判断した人もいるということです。何十年後には、この「暴論」が通説になっている可能性がまったくないわけではありませんが、学問では、結論だけではなく、論証過程が重要です。


「内容」が一般常識とかけ離れているとか、外国の反発があったからというのではなく、安易に発表したこと自体が幹部としての自覚に欠け、そのレベルの低さにより能力に問題があるということから、更迭になったと理解すべきです。


懲戒処分をすべきだとか、退職金を返還させよというのは、私には理解できません。

懲戒処分は、なんらかの職務上の義務に違反したとか、職務上の犯罪を犯したということが前提になるはずです。

しかし、田母神航空幕僚長は、なんら、職務上の違反をしたわけではありませんし、犯罪を犯したわけでもありません。


政府の公式見解とは違うことを、個人的意見として発表したわけですが、それ自体は懲戒の理由にはなりません。

政府の公式見解といっても、法令に書いてあるわけでもありませんし、行動指針ではなくて歴史認識です。

政府の公式見解とは違うことを、職務上行ったり、指示したりすれば、当然、懲戒の理由になりますが、今回はそうした行動をしたわけではありません。

政府が、自衛官に対して、軍事に関する見解の発表を禁止していたとすれば、義務違反になると思いますが、仮にそのような禁止事項があったとしても、懲戒免職で退職金なしというのは処分としてはいきすぎです。

せいぜい、自覚の問題だといえるでしょう。

また、政治家ではないのですから、「軽々しく発言した」とか「身分をわきまえて」といった批判が該当するとも思えません。仮に該当するとしても、やはり、自覚の問題であり、懲戒処分をすべきということにはなりません。

違法行為や違反行為に対する懲戒処分ではなく、ミスや能力を根拠とした「分限処分」すなわち「降格」ということで、妥当な処分だったと思います。


任命責任といった点を追及している人もいるようですが、田母神航空幕僚長が命令を着実に実行し、能力があったとすれば、特に問題があったとは思えません。政府の公式見解と異なる思想を持っている人を任命すべきではないとすれば、公務員や自衛官の任命には思想調査あるいは洗脳をすべきということになります。たとえどのような思想を持っていたとしても、政府の方針を着実に実行するのであれば、それでかまわないはずです。だからこその文民統制なのです。今回の件は、「文民統制に問題があった」という問題ではなく、「文民統制があるので問題とはならない」ことのはずです。

憲法遵守義務も同じで、憲法に違反した行動をとるのは義務違反ですが、憲法を変えるべきと考えたり主張するのは義務違反ではありません。

これは、民間でも同じで、幹部や上司の方針がおかしいと思いながら、職務としては着実に実行するのが普通です。会社の方針とは違う思想を持っていたからといって、懲戒処分をされるべきだ、とはならないと思います。


政府を批判するとすれば、自衛隊員あるいは自衛隊幹部に対して、軍事に関する意見の発表を禁止する、あるいは許可制にするということについて、法規で明確な基準と処分の規定を置いていなかったことに対してだと思います。


国会に田母神航空幕僚長を呼んで質問するなど、まったく意味がなかったと思います。

国会では、田母神航空幕僚長は自分の見解が正しいということを堂々と主張しており、国会議員では、その見解に対して有効な学術的な反論も当然できなかったわけです。学術の場ですべきことを、国会でやろうとしても、無理だし、すべきではないということです。


田母神航空幕僚長や政府を強く批判している学者やマスコミがあります。

もしも、この論文が国益を損なうとすれば、マスコミが大きく取り上げるほど国益を損なうことになるということをわかってやっているのでしょうか?

そして、思想と表現に対する批判は、自らに向かってくる刃であるということを、わかっているのでしょうか?