米兵の暴行事件について | 第6の権力 logic starの逆説

米兵の暴行事件について

この問題は非常にコメントしずらいのですが、だからこそ、あえていくつか留意したほうがよいと思うことを、書いてみようと思います。


新聞報道などによれば、在沖縄米海兵隊員(38)が中学3年の女子生徒(14)に対する強姦容疑で逮捕されたわけですが、未成年者に対する性犯罪なので、当然、詳細はわかりません。

ただし、容疑者は、否認しているようです。


沖縄県議会などでは、被害者への謝罪、基地縮小、地位協定の見直しを求める決議をしているようです。

高村外務大臣は、日米地位協定見直論が出ていることについて「地位協定はグローバルスタンダードだ」「この事件がいくら忌まわしい事件だからといって、それ以上のことを外交上要求するのかどうか」と、地位協定の見直し要求には否定的のようです。



まず、留意することとして、以前に鳩山法務大臣発言に関して書きましたが、すでに、有罪が前提とされた報道がなされているということです。

「有罪が確定するまでは無罪」とはなっていません。

今回は、容疑者が否認しているケースであるにもかかわらずです。

次に、女子生徒が男の車やバイクに乗ったことについて言及したり、なんらかの示唆をするものもあるようですが、女子生徒の行動がどうであっても、犯罪が正当化されるものではありません。

仮に(念のために強調しておきますが「仮に」です)、14歳の少女との性行為は、同意があっても、わが国では犯罪になります。(いわゆる「法定強姦」。刑法は13歳未満ですが、沖縄県青少年保護育成条例では18歳未満です。この規定は「淫行条例」といわれることもあります。)



そして、この犯罪と、基地や地位協定とは、直接関係がないということです。

加害者が米兵であっても、日本人であっても、被害者が受ける被害は同じです。米兵だから許されない、米兵だけが許されないというわけではありません。

残念ながら、わが国においては、日本人が加害者である性犯罪も発生しています。そして、それは、決して少ない数ではないと思っています。

基地問題や、地位協定に話をもっていくと、犯罪の防止、被害の防止から離れてしまう危険があるのではないか、と思います。



地位協定については、この事件では、本当は論点になっていません。

容疑者は逮捕されています。

地位協定で主に議論になるのは、身柄の引き渡しですので、警察が身柄をおさえているこの事件では、地位協定の問題はおきていません。

ただ、容疑者が基地に入ってしまうと、身柄の引き渡しがなされないかもしれないという危惧から、警察が逮捕に踏み切ったとすれば、実は地位協定も問題になったということになります。



地位協定で問題になる身柄の引き渡しですが、これは、米国側からみれば当然のことかもしれません。

米国は、兵士を不当な人権侵害から守らなければなりません。

わが国では、容疑者は当然のように、かつ、長期間にわたり身体拘束されます。

代用監獄という制度で、この拘束が警察の建物内においてなされることもあります。

このような、容疑者に対する対応は、わが国の国内においても、批判をされることがあります。

被害者に対する身体拘束や、代用監獄を批判するのであれば、地位協定には一定の理解をせざるをえないはずです。

(しかし、身体拘束や代用監獄を強く批判している人のほうが、地位協定の見直しを主張しているようも思えるのですが・・・)

「地位協定はグローバルスタンダードだ」「この事件がいくら忌まわしい事件だからといって、それ以上のことを外交上要求するのかどうか」という高村外務大臣の発言は、あたっているかもしれません。

そして、それは、わが国の刑事制度が、グローバルスタンダードに達していない、ということを意味するのかもしれないのです。