見上げる、そら。
広がる雲は厚く、暗く
もれる陽光(ひかり)は少ない。
ビルを抜ける、風。
私の吐く白い息 悴む指先。
(寒い、今日は特に…)
灰色の世界 暗い空模様
映画で見た、Londonの空みたい、なんて
それは偏見だな、と笑ってみる。
そうして頭の中の”London”と
このTokyoの空を重ねて歩く
人の行き交う駅へと。
退屈な学校 授業。
窓際に座る子どもの、小さな声。
「あッ…
小さな声から、おおきなざわつき。
雪だ」。
電車に乗った私。
満員なのに嫌気が差して
でも自分も”満員の人”のひとり。
(いつものコトだけどさ)
ふと見る、外の景色。
(ゆ、き…??)
目に飛び込んだのは
白く、小さく儚げな、無数のカケラ。
”特別寒い日” から
”特別寒くて楽しい日” に変わる瞬間(トキ)。
雪、
それは全ての人に届くようにと
ゆっくりと、静かに舞い落ちる。
いつもの閑散とした
狭い狭いグラウンド。
今日ばかりの、溢れる子ども。
みんな寒さを忘れているの??
空から降るカケラひとつも逃すまいと
走り回る。
外へ降り立つ私。
じかに感じる、冷たいカケラ。
(ほんとに雪…何年ぶりかな)
いまさらこんなオトナになって
雪くらい、ただ寒いだけ。
そうやって考えていても
気持ちの高鳴りを感じる、私。
コドモな、私。
雪はしばらく降るものの
結局積もることはない。
でも
子どもたちの記憶に、心に、
積もって、ずーっと残るもの。
雪は冷たく、世界は暗い。
でも
私の心はいつもより
ほんの少し、温かかった。