先日、僕は申し訳なさそうに近所の病院の受付に立っていた。
20代の頃、病院なんて少々の病気では行くことなんてなかったんだけど、30を過ぎてからは、病院でもらうクスリの方が薬局で買うクスリよりコスプレパーティーことコスパがいいと学び、昔より病院の敷居は低くなってきた。
ただ、なぜ申し訳ないかというと、待合室にいる人は、なぜかみんな具合が悪そうだからだ。
少なくとも、同じ時間にフィットネスにいる人と病院の待合室にいる人の顔を見比べられたら、確実に病院の待合室にいる人の方が、具合が悪そうな顔をしている。
そんな中、たかが風邪なのに薬局よりコスプレパーティーがいいから。との安易な理由で病院に来てる自分が申し訳ないというかなんというか、勿論 待合室でも一番後ろのイスの端の方に『面目ない』の気持ちとともに座って自分の名前が呼ばれるのを待っていた。
『カブトムシブルドーザーさ~ん、二番にお入り下さい。』
呼ばれた。
因みに『カブトムシブルドーザー』というのは便宜上です。
もし本名だったら、僕は内科ではなく精神科に通ってるハメになっていただろうね。
その点については、カブトムシブルドーザーと名前をつけてくれなかった両親に感謝です。
診察室に入って
先生 : 『おはざいます。』
僕 : 『おはざいます。』
と定型文的な会話をした後は、採血をして再度待合室で申し訳なさそうに結果がでるのを相変わらず左斜め後方最端の定位置で待っていた。
時計の長針が60度回転したくらいで結果がでるとのことだったが、再度呼ばれたのは5分後くらいでした。
イスに座るなり先生が妊娠検査キットみたいなのを見せて『インフルエンザ陽性だね。』って。
ここが産婦人科で僕が私だったら『おめでとうございます!』なんだろうけど、残念ながらここは内科で僕は僕なんで、『おめでとうございます!インフルエンザです。』なんて言われませんでした。
代わりに言われたのが『いつから具合ワルイ?あ、そう…そしたら会社はいついつまで休みね。』って。
ジーザス…
インフルと言われた瞬間は、『あっ、そうなんすね~』くらいにしか思わなかったが、『いついつまで会社は休み』と言われると、かなりリアリティが出てきた。
はっきり言って、この瞬間の病院の先生の権力者っぷりは、会社の社長なんかとうに飛び越えてアメリカ大統領やローマ法王と同等の権力を有している。
ついさっきまで会ったコトもない人に抱えてる仕事内容も確認せずに『いついつまで会社は休みね。』ってサラっと言える権力、まぢハンパないです。
取り敢えずお会計待つ為に、また待合室に戻った時、心無しか誇らしい気持ちだった。
最初に来た時は
『風邪ごときですみませーん…』
と思ってたけど、今では
『僕、インフルですけど何か?失礼ですけど…あっ、風邪ですか、そーですかそーですか、良かったですねー。因みに僕、インフルなんですよー。』
くらいに誇らしかった。
待合室で座る席も後方最端の定位置から、テレビのよく見える二列目に座るくらい誇らしかった。
風邪だと思って申し訳なさげに来院し、インフルエンザと言われ胸を張って退院できて良かった。
気分が良かったので、帰り道鼻唄を歌いながら帰った。