その昔、サッポロビールは美味かった。
特に「ぐい生」が最高だった。
アサヒ・スーパードライが発売される以前は、ビールと言えば黒ラベルだった。
その中でも小さなたる型の「ぐい生」が一気に飲めるステキなサイズだった。
かぽっと開ける「ぐい生」
開口部が広く、香ばしいビールの薫りが楽しめた。
最小の瓶ビール「ぐい生」
きんきんに冷やしたら史上最強のビールだった。
朝目覚めると素晴らしい天気で、こりゃ家で悶々としているのはもったいない、最高にステキな場所で最高に美味い「ぐい生」を飲もう!そんな日は仲間を集め、波打ち際でビールパーティするのが俺たちの基本だった。
バイクのタンデムシートに「ぐい生」が詰まったクーラーボックスをくくりつけ、第三京浜を時速200キロでぶっ飛ばす。
どら息子たちが鎌倉の海で、朝から晩までビールばっかり飲んでいた。
飲みまくっているものだから当然出す回数も多い。
目の前の海につかってシュールな気分につつまれながら放尿。当然かわいいおねいさんの側に接近して放尿する。基本中の基本だ。
何も知らずにはしゃぐビューティさんたち。あとでナンパでもしてみよう。そして仲良くなったら、あの時実は小便をしていたんだとカミングアウトするんだ。
ジリジリと照りつける太陽、FENからは陽気なロックンロール、これぞパラダイスだ。
時間の感覚が無くなる。
陽に焼けているのかビールのせいなのかわからないが、体中真っ赤になるどら息子たち。
ビールばっかり飲むものだから、一向に腹は減らない。いや、もうちょっと正確に言うと「腹は膨れている」のだが、流石にビールばっかりだと何か飲み物以外を胃袋に送り込みたくなる。これまたシュールな感覚だ。
頭の上に「ぐい生」の空き瓶の山が出来上がる。
そうこうしているうちに相模湾の左手に富士山のシルエットを浮かべながら太陽は沈む。
潮風は波をスプレーしながら陸に吹き上げる。
そして俺たちはフラフラになりながらそこいらのラーメン屋で冷やし中華を食って帰るんだ。




あのステキな夏を今年こそは味わいたい。
何も考えずにビールばっかり飲もう。
流石にもう飲酒運転などするつもりはないが、「イヤッホウっ!」と叫びながらバイクを転がした遠い日々が懐かしい。
サッポロ「ぐい生」はもう廃盤になってしまったが、この際違うビールでもいいや、ばんばん飲んで海に入って放尿するぞ。
あなたが綺麗なおねいさんで、この夏鎌倉に遊びに行くとしたら、ひょっとしたら俺に逢うかも知れません。
その時は仲良くして下さいね。
ビールくらい奢りますよ。