【1.悩みと出逢い】

物語を書くとはどういうことか、私は少し悩んでいました。

L女物語というお話をTwitterで連載を始め、現在47回。

このまま書き進んでいくとして・・。

果たして今後、より面白い作品になるのか？

そんな疑問が少し生じていたんです。

そんな現状を打破したくて、図書館に行って片っ端から絵本を読んだり、「～物語」と名の付く作品を読んでみたり。

私が書くとどうしてもカクカクした論文調の文体になりがちで、考えていることをそのまま文章に起こしても豊かな物語にならない。

Virtual Worldでの出逢いや会話、やり取りの中で、10歳の少女えるが成長していく物語を描きたいと思って書き始めたものの、事実上のやり取りから一歩踏み越えた「物語性」が足りていない気がしていました。

そんな時、この一冊に出逢いました。

ねむさんが書いた、「仮想美少女シンギュラリティ」。

ねむさんのことは、私がVirtual活動を始めた2018年の12月頃に知りました。

「…お前は、誰だ？」の自己紹介で、すでに話題だったのです。

実際にその動画を観ると、私の中でフッとこみあげてくる感情がたくさんあって、突然ぶった切られるような終わり方も素敵な後味を生んで、私はしばらくニヤニヤしていました。

このセンスはすごい、と。

予め作りこんだシナリオありき？

たまたま、醸し出たこの雰囲気？

どちらにしても、衝撃度は抜群でした。

ねむさんの自己紹介以外の動画も、すごくわかりやすく興味深い内容でした。

博識な方だというのがすぐにわかり、仮想通貨やシンギュラリティの話も惹きつけるものがあるし、「新しい経済圏」を本気で作るため、具体的に活動しているところがとっても最高。

実際に仮想通貨NEMを立ち上げたり、経済コスプレの実現への一歩として、好きな名前で口座を開く方法を見つけたり。

口先だけではなく、確実に「今の現実を変えていく意思と力」を持った人なんだなって。

そんなねむさんが書いた、小説。

「これは買うしかないでしょ！」と書籍版が出たタイミングで購入。

一枚一枚ページをめくるのがとってもドキドキで楽しくて、残りのページが少なくなっていくのがもったいない気持ちで読み進めていました。

【2.これって、すごい物語だ。】

ページをめくってすぐにわかる、その完成度。

めっちゃ小説。

自己紹介動画とのつながりや、名前の関連性、物語の中に出てくる地名や人名のネーミングセンスの良さ。

これって、すごい物語だ。

物語＝フィクションだと知りつつも、ねむさんが描く世界のリアリティに引き込まれすぎた私は、そこに出てくるものすべてに実在感を感じながら物語の中に入り込んでいました。

物語の中に出てくる「オルタナティブ・テラ」（通称「オルタナ」）も、思わず

「そんなアプリがあるのか！」

とすぐにネットで検索している自分が居ました。

挙句に、

「”オルタナ”ってググっても出てこない！なんで？私の知らないところでそんな素敵な世界があるのに、なんで私だけ知らないの？」

ってちょっと焦り始めたり（笑）。

完全に、物語のrealityに飲み込まれていたのです。

ごく自然に、とっても心地よく。

【3.体験と、感じたことこそreality】

この小説の醍醐味は随所にたくさんあるけれど、美少女ねむの姿と声を手に入れた時の喜びと感動の場面が、やはり印象的でした。

実際にその体験をしたことのある人にしかわからないワクワク感やドキドキ感を、伝わりやすいカタチで文章にして、物語にしてくれた。

それって、とても画期的なこと。

同じ体験をした人には「うんうん。わかるわかる！」。

まだ未体験の人には「私もやってみたい！」。

「人類美少女計画」というねむさんのビジョンは、この物語を読むだけでも、確実に浸透していくのです。

ねむさんの自己紹介動画内の細かな表現を、物語の中でこれでもかと関連付けていくところも、お見事。

「初めからこの物語を思い描いたうえで、自己紹介動画創ってたのかな？？」

と思ってしまうほどの緻密さ。

もしかしたら、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。

でも、それがどっちかなんて関係ない。

面白ドキドキな気持ちで読める。

それって最高。

「第１１章　ブレイン・マシン・インターフェース」での、肉体から解き放たれて新しい命へと生まれ変わろうとする場面では、ずっと手に汗握りっぱなしでした。

なんだかいけないものを覗き見てしまっているかのような感覚もありましたが、それこそ小説。

（あまり書くとネタバレになるのでこの辺で。）

【4.仮想美少女シンギュラリティ＝私の物語】

物語全体を通して一つキーワードになっているのは、「実験」だと思います。

「人類美少女計画」を実現するためには、数々の実験が必要で。

失敗することも、経験という大切な積み重ね。

この物語の中には、自分が信じた道を邁進し、地道に長年努力を続けても芽が出なくて、上司である教授にも評価されなくて、社会的にも受け入れてもらう機会の少なかった「私」が描かれています。

そんな不器用だけど真っすぐな「私」が、たくさんの人の視線や注目、期待を集めながら、仮想美少女の身体を自分自身の身体だと認識していく過程は、新しい自分を自分だと認めて受け入れていく、大切な瞬間。

ぎこちなく、たどたどしくも、新しい時代へと一歩踏み出そうとしているすべての人の、もがき、あがき、苦しみながらも、希望をなくさず生きようとする姿を体現しているのだと感じました。

・・あれ？それって、私のこと・・？

そうか。この物語は、私自身の物語だったんだ。

それに気づいたとき、私は目頭があつくなっていました。

気が付けば、私も「人類美少女化計画」の共犯者になっていたようです。

【5.私の物語に必要だったもの】

最後まで読んで、気づいたこと。

それは、「私が必要としている物語の一つの形が、”仮想美少女シンギュラリティ”だったんだ」っていうこと。

私が紡ごうとしているL女物語とはまた違う形で、この作品は一つの可能性を示してくれた。

「あなたは、何にだってなれる。」

私が伝えたいメッセージと同じものを感じ取ることができた。

ねむさん独自の視点と世界観も、とても新鮮だった。

私が書いてるL女物語に足りないものも、わかった。

ねむさん、だ。

そうだ。

ねむさんにも、L女物語に登場してもらおう。

出演依頼をするのはちょっぴり緊張するけれど。

決めた。

もっとたくさん実験をして、失敗なんて恐れずに、前に進んでいこう。

ここは、失敗だって温かく笑顔で受け入れてくれる、優しい世界。

失敗という経験も、前に進むためには必要だ。

ねむさんじゃなくて、ねむちゃんって呼んでみようかな？

どう思われるかは、さておき。

まずは思い切って、やってみよう。

私の小さな実験は、まだ始まったばかりだ。

この化学反応は、必ず新しい世界につながっている。

それは、ほんの少しだけ先の未来。

まだ皆に均等に行き渡っていないだけの、まぎれもない現実＜いま＞。

ねむちゃん、ステキな作品をありがとう。

ずっと大切にします。

「仮想美少女シンギュラリティ」と物語性の追求