大阪を出発し、電車に乗って奈良の「西ノ京駅」で下車。最初に訪れたのは、世界文化遺産である薬師寺でした。この寺院の名は、中国仏教界の著名な仏教居士趙樸初先生によって揮毫されたもので、日本法相宗の総本山でもあります。縁あって唯識学を学んだことがあり、至誠の心で拝観し、自然と敬意が湧き上がりました。
薬師寺を出て北へゆっくり歩く途中、趣のある蕎麦屋に偶然出会い、ふと立ち寄ってひと休み。天ぷらと蕎麦のセットをいただき、素朴ながらも味わい深い一食でした。腹ごしらえの後は唐招提寺へ。金堂、戒壇を順に拝観し、最後に鑑真和上の御廟にて静かに祈りを捧げました。その東渡の大志と不屈の精神に、深い感銘を受けました。
寺を後にして、渓流沿いの小道を歩いていくと、やがて平城京跡の範囲に入ります。朱雀門は広大な野原の中にぽつんと立ち、まるで時代に取り残されたかのような佇まい。遺跡の脇を電車が走り抜け、歴史と現代が交差する風景に、心がどこか懐かしく揺れました。途中、白髪の老人が犬を連れて散歩している姿に出会い、その穏やかな光景が胸を温かくしてくれました。
そのまま大和西大寺駅へと歩を進めます。途中、野原を急行列車が轟音とともに駆け抜けていき、車窓のそばにいた金髪の少女二人(おそらくヨーロッパから来た観光客)が私に向かって元気に手を振ってくれました。私も笑顔で手を振り返すと、心の中にふわりと喜びが広がり、まるで春風に包まれたようなひとときを感じました。それは旅の中で得た、忘れがたい一瞬でした。


























