《今日は早く帰って来なさいね》

いい匂いがするキッチンから。オンマの弾んだ声が聞こえた。いよいよドンへが帰国する。留学してから、一度も帰ってこなかったドンヘが。平静を装ってはいるけど。無駄に部屋を掃除したり。落ち着かなくて。あえて出かけることにした


『ヒョクチェ先輩』

忙しいのにすみません。大したことないよ。リョウクはよくボランティアで施設を訪問してる。合唱ピアノの指導をしたり。絵本の読み聞かせをしたり。ある施設でクリスマスパーティをやるというので、手伝いを頼まれた。リョウクはピアノの伴奏。俺はサンタの格好で風船を作ったり。お菓子を配ったり。子どもたちと遊んだり。楽しいけど忙しい

『あ。ヒョン』

指ならしを終えたリョウクが。一段と明るい声で。ぱたぱたと走っていく

『来てくれたんだ!』

約束したからね。やわらかく微笑むその人が。俺を見て、片エクボをへこませた。ぺこりと頭を下げると、すっとその身体をずらす。え...

『え!うそ!ドンへヒョン!?』

ぴょんと飛びついたリョウクを、たくましい両腕で受け止めて。困ったように眉毛を下げた、ドンヘがいた



《つづく》