DH side



それから。鰯の誘いは無視しまくった。そのうち、あきらめたのか。誘ってはこなくなった。それでも。頻繁にメッセージがくるのは変わらない


朝の挨拶や仕事のこと。たわいもない世間話し。二次会んときに、カトクを交換した子たちから。飲み会に誘われてること...


《断ってるのにさ。困っちゃうよね》


へらっと笑う顔がうかぶ。俺も困ってる。お前に


何でそんなに構うんだ。昔と違うことを、見せつけたいのか。俺よりモテると言いたいのか


あのころの...仕返しなのか...


俺たちは。大人しい鰯を、からかうことがよくあった。いまだったら、いじめの範疇に入ってたかもしれない。何をしても。鰯は笑っていた。仲がいいから。傍目には、そう見えていただろう。でも。そうじゃなかった。少なくとも。俺は


だから俺は。鰯を素直に受け入れられないんだ。もちろん、懐かしさはある。でも。何かあるんじゃないか。心のどこかで、絶えず警告音が鳴る


このまま。つかず離れず。お互いの疵を見ないように。やり過ごせたらいい。そう願った


でも。やっぱり鰯は。ただの鰯ではなくなっていた


『ドンへ』


え...いつも通り残業して。会社を出たところに。鰯が立っていた




《つづく》



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