※ゴールデン兄さんウィークでお送りしてます(⌒-⌒; )
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SW side
はぁ...サボっちまった...あてもなく。海沿いの道を歩いていた。映画でも観に行こうか。いや...それも...今日は、集中できなさそうだ
《お前は。わたしの指示通りにしていればいいんだ》
そんなのはわかってる。今までもそうだったし。アボジのやることに間違いはない。わかってはいるけど...
《映画なんて、俗人のやることだ》
留学していた、母方の叔父の影響で。幼いころから、洋画や洋楽に傾倒していた。映画に関わる仕事がしたいなんて。堅物のアボジの前で。口にできるわけもなくて。勉強の合間に。ミニシアターで、古い洋画を観るのが。唯一の楽しみだった。でも。それさえも禁じられた。そんな暇があるなら。もっと勉強しろと...
《塾なら、いくらでも増やせ》
だったら...留学でも、させてくれればいいものを...結局。信用されてないんだな...野に放したら。何をしでかすかわからないとでも、思ってるんだろう...
足元の石ころを、何の気なしに蹴ったとき。ん...?何だ...?ちょっと離れた堤防の上に。うちの学校の制服を着た背中が、しゃがみこんでるのが見えた。こっそり、回り込んでみる。あ...あれは...
『うん。そうか、そうか』
お前、かわいいなぁ。にこやかに。首輪をつけた子犬をあやしながら、写真を撮りまくっている。その横顔に、覚えがあった。三年の...狂犬 イェソンだ。数多くの武勇伝が、実しやかに伝えられていて。先生も生徒も。あまり近づかない。脱色した髪に、ピアス。柄Tにコンバースのスニーカー。どれも校則違反だ
『おい。そこのでかいの!』
え...気がついたら。切長の涼しげな目が。俺を捕らえていた。え...と...一応、きょろきょろと回りを伺う
『お前だよ』
そこの暑っ苦しいやつ。暑っ苦しいって...
『何か、くいもん持ってねぇ?』
こいつ。腹すかせてんみたいでさ。短い尻尾を振りまくっている、子犬を抱きあげて。食いもんって...普通、持ってないだろ...
『すいませーん!』
ぱたぱたと。忙しない足音がして。その子。リードが外れて。逃げてっちゃって...あ、そうなんですか。どおりで、懐っこいと思った
『よかったな。お前』
愛嬌たっぷりに。子犬と顔を突き合わせる。何度も頭を下げる飼い主と。ぴょんぴょんと跳ねる子犬に手を振って。地面に置いたリュックを拾い上げた
『何だよ』
つい、ぼうっと眺めてしまっていたらしぃ。あ...いや...
『意外だなって...』
意外?切長の目が。きらりと光る。え...あの...背中がちょっと。ひやっとした
『学校じゃ。あんまり見ない姿だったので...』
はん。あの学校には。あんなかわいいやつ、いないだろ。はぁ...
『お前だって。いつもつまんなそうな顔してんじゃんか』
え...知ってるよ。次期、生徒会長だろ。さぁ...どうでしょうか...そんな噂も耳にする。でもそれは。成績とか人望とか言うより。アボジが出した、多額の寄付金のおかげだ
『ま。実際。学校なんて、つまんないところだけどな』
そうですね...毎日。同じことの繰り返しで。テストの点数や先生の評価に、一喜一憂して...
『じゃぁさ』
俺の肩を。ぽんと叩いた
『会長さんになって。おもしろくしてくれよ』
え...変えることだって、できるだろ。そんなこと...考えもしなかった...ただ...敷かれたレールの上に、乗るのが嫌で...
『楽しみしてるよ』
にっこりと。目を細めて。妙に安定した、口笛を吹きながら。歩きだしたその背中に
『あ、あの...』
咄嗟に、声をかけていた。立ち止まった先輩が、振り返る。まだ何か用かと。言いたげに
『映画...観に行きませんか?』
映画?眉間に皺が寄る。古い作品なんですけど。すごく良い映画で...旧作だから、料金も安いし...早口で捲したてる。何で俺...こんないい訳じみたこと...へぇ。そんな趣味があったのか...
『いいよ』
つきあってやるよ。え...ほら、行くぞ。は、はぃ。すたすたと歩き出した先輩を。あわてて追いかけた
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