ヒョクチェ side
『ぎゅー。きたぞー』
あ、ヒョクチェヒョン。店のドアを開けると。奥からキュヒョンが顔を出した
『あー。腹減った』
テーブルに。皿を並べる。何?ヒョンもたべるの?あたりまえだろ。俺は自分のバイクで、配達を請け負っていて。キュヒョンから、オーダーがあったのをいーことに。同じものを作ってもらって。届けにきた
『そういえば、ヒョン』
ん?かき混ぜたチャジャン麺を、勢いよくすする。あー、うめぇ。あの日、大丈夫だった?
『あの日?』
ん。ここで。結構、飲んでたでしょ?あぁ...
『店、閉めたら。送るって言ったのに』
いらねぇって。ふらふらしながら帰ってったから...あぁ...まぁ...何、その曖昧なかんじ
『まさか...また面倒なことに、巻き込まれてないよね!』
またって何だ...巻き込まれてたら、こんなとこで、のうのうとしてらんねぇわ。そうだけどさ...
あの日。シャワーを浴びて出てきたら、誰もいなくて。さっさと出てけって言われてたから。お詫び代わりに。デリバリーのクーポンだけ置いてきた。オフィステルみたいなとこで。表札もなくて。だから。誰だかもわかんない。もう、会うこともないだろうけど...
『いい加減、ふっきりなよ』
あんなオトコ...恋人にフラれて。やりきれなくて。キュヒョンの店で、飲んだくれてたんだ
『うるさいな。俺には、やさしかったんだよ』
『あれを優しいって言うんだから。ヒョンもなかなか歪んでるよね』
歪んでる?こんな俺と、一緒にいてくれたんだ。充分やさしいだろ
『だまって食え』
はぃはい。割り箸で。皿のフチを丁寧にこするのを
、目の端に入れながら。あの日。一枚の絵画のように。窓際に浮かびあがったシルエットを、思いだしていた
《つづく》
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