ドンへ王子は、何度も王様に掛け合いましたが。王命はもちろんの事。国と国との約束が、覆るわけがありません。頼みの第一皇子は。そのまた隣りの国の、婿になることが決まってしまいました。度重なる祝事に。城下は連日、お祭り騒ぎです
『王子...』
爪を噛みながら。ぐるぐると部屋を歩き回る、ドンへ王子を。恋人のリョウクが、心配そうに見つめます。その視線に気づいた王子が
『リョウク』
案ずるな。リョウクの小さな肩を。そっと抱きしめました
『其方を無碍にすることはせぬ』
ですが...言いかけたリョウクのくちびるに。しっと。王子が人差し指をあてました。云うな...何も...言葉にしなければ。なかったことに、なるかのように
第一皇子が即位した暁には。この別邸で。リョウクとふたりで暮らすのが、ドンへ王子の望みでした。リョウクにしても。同性云々の前に。身分の違う王子と、添い遂げられるなど。思ってもいませんでした。ただふたりで。静かに過ごせれば、それでよかったのです
『吾を信じよ』
王子...言いようのない不安をかき消すように。ふたりは、ひしと抱きあいました
愛しい恋人と、想いを別邸に残し。ドンへ王子は、城に上がりました。そして、ほどなくして。婚礼の日を迎えました。皇太子となるドンへ王子と。輿入れされる王女をひと目見ようと。城の周りは、群衆で埋め尽くされました
バルコニーから、様子を窺っていたドンへ王子は。王女の輿入れにしては、質素な馬車や従者たちに。違和感を感じました
『皇太子。お時間でございます』
わかっている。意味のないため息を、ひとつついて。袖の下に忍ばせた、ブレスレットに触れました。それは。恋人のリョウクと。将来を誓ったときに、取り交わしたものでした
色とりどりに咲き乱れる、花々の間を。隊列がゆっくり進んできます。王子の前で。一台の馬車が止まりました。従者が、恭しくドアを開けると。薄紅色のドレスに身を包み、栗色の髪に小さなティアラを乗せた王女が。ひょろりと降り立ちました
『ウニョクと申します』
か細い声で名を告げると。王女はにっこりと微笑みました
《続》
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※画像お借りしましたm(_ _)m
※まずい...長くなりそうな予感...
※きのーのにゅーです