出張での楽しみ

 

 

 

 


ヒョクチェ side



めずらしく、出張なんてのに行かなきゃなんなくて。スーツケースに荷物を詰めながら。戸締まりとかあまり遅くなるなとか、細かくゆってたら


《心配しすぎだよ。俺、慣れてるし》


ドンへが苦笑いしながら。そーだった。こいつは、ひとりで暮らしてきたんだ。ずっと...手を止めて。その手をドンへにのばした。されるがまま。俺の胸に落ちてくる。早く帰ってくるからな...ん...



はじめて訪れる街には、わくわくしたけど。営業スマイルをはりつけて。自己紹介して。名刺を交換して。なんてのを。一日くりかえしていたら、さすがに疲れた。おまけに会食にも連れていかれて。仕事みたいなもんだから、仕方ないけど


もう一軒って誘われたのを、やんわりと断って。よーやくホテルにたどりついた。はぁ...ドンへ。何してるかな。カトクするヒマもなかった。ネクタイをはずして。ベッドにたおれこんで。ドンへに電話する。すぐつながって。でも。一瞬、間があって...ドンへ?


《ヒョク?》


ん...もー家か?うん。ヒョクは?いまホテルもどった。そーなんだ。おつかれさま。うん...つかれた...ヒョク...


《つかれてるなら。はやくシャワー浴びて寝なよ》


ん...何かむっとした。俺のことを気づかってくれてるのは、わかんだけど...ちょっとだけ。なんてゆーか...ちょっとだけ...つかれてるから...


『つかれてるから...ドンへの声、聞きたいんだろ』


いつになく。そっけない言い方になってしまった。ドンへがだまりこむ。おかしーか?ううん...俺も...


《俺も...ヒョクの声、聞きたかった》


ドンへの声が。こころに染みる。ふだん一緒にいるから。滅多に電話することなんてない。それもなんか。新鮮で


《ヒョク...》


ん?会いたい...ん、俺も...


それからドンへが。だらだらと、きょーのこととか脈絡なく話すのを。ごろごろしながら聞いていた。やべぇ...気持ちよすぎて...寝落ちそーだ...



《ちゃるじゃん》



※本日のラインナップ