ドンへ side



こんなはずじゃなかったのに...ちゃんと話さなきゃいけないのに。できるってゆってくれたのに...あせればあせるほど、涙しか出てこなくて...



不可抗力だった。ヒョクチェくんのおかげで。あまりつっかえなくなって。それがおもしろくなかったんだろぅ。クラスメートに呼びだされて。それでも、だんまりを決めこんだから。こづき回されてるとこを、ヒョクチェくんが助けてくれた


僕をかばって歩きだしたヒョクチェくんに、リーダー格がとびかかって。もみ合いになってしまって...


『あ...』


止める間もなく。相手が転んでケガをした。それだけで。終わるはずだった



『うちの子をいじめて、ケガさせるなんてどういうこと!』


目撃者として校長室に呼ばれて。ヒョクチェくんにくってかかる、誰かのオモニの剣幕に呆気にとられた。え...何でそんなことになってんの...僕をからかってたクラスメートは、見事に口裏を合わせていて


何で...どうして...ヒョクチェくんは、僕を助けてくれただけなのに。そ...そ...そ...そ...喉がつまる。言葉が出ない。ちゃんと説明しなきゃいけないのに...自分の不甲斐なさに、涙があふれた。どの言葉もつっかえてしまって


『ドンへ』


ヒョクチェくんが。ちーさく首をふった


『まぁ、こわぃ』


そんなににらみつけて。あなたもいじめられてたんでしょ。ぶんぶん首をふる。さすがにクラスメートたちも、顔色を変えた


『ケガをさせてしまったことは、申し訳なく思っています』


すみませんでした。ヒョクチェくんが、きっちり頭を下げた


そんな...ヒョクチェくんがあやまることないのに...ヒョクチェくん...ごめん...助けてあげられなくて...ごめん...守れなくて...ごめん...



《つづく》


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