私たちの施設で働いているには、基本的にベータです。どんなに抑制していても。オメガの生態に差し障りがないとは、言えないので


ご存じだとは思いますが、ベータでも。アルファやオメガに転性する例は少なくありません。なので、施設の職員には、定期的に検査をすることが義務づけられています


それでも落とし穴がありました...ある職員が、突然、アルファ化したのです。検査のはざ間であっても。自覚した時点で速やかに申告しなければならないことは、契約書にも明記されています。しかし、そうなれば解雇です。それを恐れたその職員は、アルファ化したことを隠そうとした。仕事上、アルファやオメガに接してきたことで、うまく適応できると買い被ったようです。素人判断で...


施設には、多くの試薬が保管されています。それを流用して様子を見ていたようで。何の薬でもそうですが、適正というものがあります。多くても足りなくても。効果はありません。診断も処方も受けず。強い薬を乱用したことで、セーブできるはずのものも出来なくなっていく...


不安定なまま。その職員は、ウニョクの世話についてしまった。そのことによって。運悪くその職員は、完全にアルファとして目覚めてしまったのです


異変に気づいた他の職員が止めに入ったので、ウニョクは難を逃れました。しかし、記憶を失くしているといえ。アルファに襲われたのは二度目です。アルファ化した職員を取り押さえている間に、ウニョクは姿を消してしまった...


そんな...それで...こんなところまで...どれほどこわかったか...どれほど...心細かったか...ひょっくんのやわらかな頬をなでる


『経験値が不足している分、アルファ化したベータは。既存のアルファよりも脅威となることが、往々にしてあるのです』


それは...俺が...ひょっくんを襲うこともあるってこと...?



《つづく》


※きのーの最終更新です