夕飯後、何気なくテレビをつけた。あれ?って顔をしたけど。気づかないふりをして
夜の情報番組で。聞こえてきた名前にびくっとして。ぱっとリモコンに手をのばしたのを遮る。何で?なみだ目が訴える。でもこれは...これだけは、自分の目で見てほしかった
《消えたイケメン俳優》
そんな扇動的なタイトルの特集で。ドンへの帰りを待ち望むファンたちが。聖地巡りをしていると言う話題だった。ドンへがよく立ち寄った場所。好きだった場所。スマホでドラマを観ながら。語って。笑って。泣いて...ドンへがぐずぐずと鼻をすする
ヒョク...わざと...?かすれた声で。ん...
『やな思いさせたならごめん...』
でも...
『でも。お前を待ってるひとがたくさんいるってことは、知るべきだと思ったんだ』
こんなにたくさんのひとに。ちからを与えてきたんだって。支えて。支えられてきたんだって。それに...
『俺も観たいんだ』
お前が...俳優 イ・ドンヘが。演技してるのを。活躍してるのを。ヒョク...あれからバイトの合間に。出演作を観てみた。脇役であっても。目立っていた。もちろん顔のせーもあるけど。さりげない存在感とゆーか。そう。そこはかとない残り香のよーな
まだまだできるはずだ。こんなとこで、いつまでも燻ってていーやつじゃないんだ...
『焦らなくてもいいからさ』
ゆっくり考えればいい。肩を抱いて。うん...ありがと...
次の日の朝。ドンへは姿を消した
俺の毎日は変わらない。バイトして。バイトして。バイトして
季節が変わったころ。再びその名前を目にした。《イ・ドンヘ復帰作》今季の連続ドラマの制作記者会見で。主役だった。しかも。新人俳優と一緒にオーディションを受けて、その座を勝ちとったらしい。あのときとは違う。自信に満ちた、きらきらとした眼差しで
『やったな』
もちろんうれしーんだけど...ちょっと寂しい...
《つづく》
※本日のラインナップ