朝から暑い日だった。試験会場までシウォンが送ってくれて


『終わったら連絡しろ』


迎えにくるから。スマホみたいに使える、時計を貸してくれた


また受ければいいなんて思っちゃだめだ。合格して。スヌンに臨む。たとえその先に。何もなくても


『ドンへ』


門を入って歩いていたら。ひ、ひょく...よかった。会えた


『ど、どーして...』


ちゃんと受けるか、見張りに来た。見張りって...おでこにうっすら汗をうかべて。これ。ヒョクチェがくれたのは、グミとゼリー状のサプリメントみたいなやつ


『チョコだと溶けるからさ』


途中、気分転換に食べろ。ん...ありがと...ちょっと痩せたか?暑いからな。ん...


『心配すんな』


大丈夫だ。ぽんぽんとあたまをなでてくれて


『俺、ここで待ってるから、精一杯やってこい』


え...何で...いーから。暑いのに...ちゃんと涼しいとこにいるよ。ほら、早く行け。遅れるぞ。あ...うん...どきどきしてる場合じゃない。席について深呼吸をする。よし...



チャイムが鳴って。終わった...いつもより手ごたえがあった。と思う...おーきなため息と共に会場を出て。ほんとに待ってるのかな...きょろきょろとしてたら...


『ドンへ』


ヒョク...ヒョクチェがにっこりと手を広げる


『おかえり』


ヒョク...走って。その腕に飛びこんだ



認定試験の合格通知を。ボクはヒョクチェと暮らす町で受けとった。住所変更しといたんだ。ヒョクチェはそう言ったけど


ヒョクチェはダンスのイントラクターの。ボクはカフェでアルバイトをして。毎日、笑って。抱きあって眠って


試験の日に借りた時計は。ここに来る前、マンションのコンシェルジュに預けた。銀行の口座に残っていたお金全部と。何も書かずに


離れた町で。知らない町で。それでもたまに。シウォンを感じることがある。うまく言えないけど


シウォンに返さなきゃなんないお金がどれくらいなのか。もう知る術がないから。やりくりして貯めたお金を。たまに。シウォンの会社の口座に振り込んでいる。ヒョクチェには内緒で


シウォンと過ごした日々を。なかったことにするつもりはなくて。守られていたから。甘えていたから


だからこそ。ボクは...



《完》


※本日のラインナップ