すぐに俺は退院した。記憶がないこと以外、これといって問題がなかったからだ。そもそも病院にはこばれたときも、打撲はあるもののあたまを打ってるよーな形跡がなく、なぜ意識がもどらないのかお医者さんもあたまをひねっていたらしぃ

心理的な要因があるんじゃないかって、カウンセラーのひとと話したりもしたけど、特に変わることはなかった


退院のときはアッパが車でむかえにきてくれて。《ここがあなたの家よ》《ここがあなたの部屋よ》そーゆわれても...はぃ、そーですかってゆーしかなくて

でもベッドに寝ころがってみたら、病院のベッドよりも安心できる気がした


退院祝いだからって、オンマが俺のすきなものをたくさん作ってくれた。でもよくわかんなくて。病院のごはんよりはうまかったけど。俺はいわゆるやせの大食いだったみたいで、オンマもヌナもあまりたべないのねってさみしげにつぶやいた


まだいろんな感覚がもどってないんだとおもう。空腹とか味覚とか。視覚も聴覚も。時間も


学校にもふつーに通うことにした。いままでどーりの生活をしていたほーが、記憶がもどりやすいかもしれないってゆわれたから


『ヒョクチェ、おはよ』


あたりまえのよーにドンへがむかえにきてくれて


『ありがと、ドンへ』


いこっか。うん。ちかくのバス停まであるいて。乗りかたとかはわすれてないみたぃだ。次で降りるよ


制服の群れに放りだされる。なんかへんなかんじだ


『よぉ!ヒョクチェ!ひさしぶり!』


あ、うん...ともだちなのかな。何人かに声をかけられるけどやっぱりわからなぃ


『ここがヒョクチェの教室』


俺のクラス、あっちだから。うん、ありがと。昼休みにまたくるよ。あ、うん...かくれるよーにそっと一瞬手をにぎって


そっか。クラスはちがうのか


ちょっとさみしく、ちょっとこころもとなくおもいながら。教室のドアをあけた


《つづく》


※本日のラインナップ