用意されたのは粥ともいえないどろっとした液体で                      


『はぃ。あーん』


こぼしたらめんどーでしょ。ドンヘがたべさせてくれて


『どぉ?うまい?』


うまいのかまずいのか...味があるのかないのか...なんだかよくわからなぃ。はぃ、ごっくん。いや...そこまでしてもらわなくても...


俺がだまってるからか、ひとさじ自分のくちにはこんで顔をしかめた


『ぅ...これならプロテインのほーがうまいね』


でもちゃんとたべなきゃ。すぐにふつーのごはんがたべられるよーになるよ。はぃ、あーん。あ...うん...


歯みがきまで手伝うってゆーから。さすがにそれは断って。トイレ付きの個室だったから、洗面台まで連れてってもらって。車椅子をつかうほどでもなかったから、肩をかしてもらって自分であるいた。ドンへが食器をかたづけにいってるあいだに歯みがきして


おわってもまだドンヘはもどってこなくて。ベッドまでくらいひとりでいけるかな...

壁をつたってゆっくりと足をうごかす。なまじスリッパなんてはいてるからつまずきそーになる


あとちょっと...だったんだけど。ベッドに手をつきそこねてころんでしまった。って...


『ヒョクチェ!』


何やってんの!だいじょぶ?ん...わるぃ。手ぇかして...


『いたいとこない?看護師さんよぼーか』


あたふたと俺の身体をまさぐる。大げさだな。なんともないよ...だって...ドンヘがきれーな二重の目を潤ませる


『もぅ...あんな思いしたくなぃ...』


学校の廊下にたおれてるところを見つけてくれたのは、このドンへだと聞いた。ん...ありがと...ほら。水。ペットボトルにストローをさしてのませてくれる


『なぁ。なんでお前ここまでしてくれんの?』


ドンへが俺の顔をじっと見る。さみしげに。ほんとに...おぼえてないんだね...視線をおとして。声をひそめて


『俺たち、恋人同士なんだよ』


へぇ。それなら...え...こ...こっ!こいび...と...まさかっ!


『だっ...だって俺もお前も...オトコじゃん!』


そぅだよ...だから...ふたりだけの秘密。だれもしらなぃ。ともだちも。家族も


ドンヘが俺の髪をそっとなでる。いとしげに。でも...俺たちはちゃんと愛しあってたんだ。そのおっきな黒目に囚われる


『ヒョクチェ...だいすきだよ』


ドンへのきれーな顔がちかづいてくる...アツい息がかかる。あ...ふれるかふれないかのところで...とっさに顔をそらした。ごめん...俺...ドンヘがふっと息をはく


『ううん。俺のほーこそ...ごめん...ヒョクチェが俺のことわすれちゃってるのがさみしくて...』


こーしたらおもいだしてくれるんじゃないかっておもって...ごめん...


あまりにまゆげをさげてなさけない顔をするから。そのあたまをそっとだきよせた



《つづく》


※本日のラインナップ