※大学を休学中のドンへは、おもてなし喫茶『House party』でアルバイト中
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ドンへ side
『バレンタインのイベントとかってないんだね』
クリスマスみたいに。えぇ。ひさしぶりにウニョクさんのおもてなしについていた。あれから日をあけずに来てくれている。通常は指名ができないから、毎回おもてなしにつくわけでもないけど
初回が俺だったからかもしれないけど、俺がつくとよろこんでくれる。気がする。ふわっと表情があかるくなる気がするんだ
まぁ自分のおもてなしを気にいってくれるのは、うれしいことではあるけど。同性だとしても
よーやく敬語じゃなくなったし。最初のときとはひとが変わったよーに話してくれるよーになったし
『やってるお店はおおいよね。看板にちらしがたくさん貼ってあって』
チョコくれたりさ。そうですね。チョコを手わたしたり。特別メニューがあったり。衣装も変えてみたり。どのお店もなにかしらやっている
うちの店はコンセプトが《セレブがひらくホームパーティ》だし。ほかのお店とおなじことはしないってゆーのがこだわりらしーし。日常の中の非日常なんてむずかしーことをオーナーはゆーけど
クリスマスのイベントはなんてゆーか、お客さま感謝デーみたいなもので
あ、ねだってるわけじゃないよ!顔の前で両手をあわあわとふる。きれーな指してるな。しろくてほそくて
『トヘちゃんみたいなかわいい子に、義理でもいいからチョコもらえたらうれしいなって、ちょっとおもっちゃって...』
へへ。はずかしそうにうつむいて顔をあからめる。俺、男だけどね...
『チョコなんてたくさんもらうんじゃないんですか』
ウニョクさま、かっこいいから。そ、そんな。ぶるぶると首をふる。そーいえば、オンナの子と話すの苦手だとかゆってたもんな
『高校も男子高だったし。大学もオンナの子がすくない学部だから。そーゆーのとは縁がないんだ...』
クセなのかな。すいっと指で鼻の下をこする。おなじ大学だとしってしまったからかもしれないけど、ウニョクさんが大学の話しをしだすとなんともびみょーな気持ちになる。いろいろききたい半分。耳をふさぎたい半分
背をむけている現実を、つきつけられるよーな気がするからかもしれない。だめだ。こんな気持ちでおもてなししてたら、ゲストに申しわけない
『こないだね...』
ウニョクさんは無邪気に話しをつづける。トヘとしてのきもちをとりもどして。空になったカップにポットから紅茶を注いだ
《つづく》
※きのーに最終更新です