始雄 side
くるまから降りてきた姿に胸が高鳴った
『今度の日曜、圭美ちゃん七五三詣でするんですって。時間があったら寄るように言ったの』
圭美ちゃんの着物姿、見てみたいじゃない?
母さんがうれしそうに。俺も五歳のときに羽織袴で写真は撮ったけど。こういうイベントごとは女の子の方がたのしいんだろうな
『始雄!圭美ちゃんたち来たわよ!』
呼ばれて降りていくと玄関のドアが開けはなたれていて。外をのぞくと、門のそばに横づけされたくるまから、ちょうど希美兄さんが降りてきたところだった。ドアマンよろしくうしろのドアを開けて。エスコートされて降りてきたのは…
『うわ!圭美ちゃん、かわいいわねぇ』
いつもはおろしているふんわりした長い髪を結いあげて。うっすら化粧までして。ちいさな口にぬられた口紅が妙に色っぽくて。あわいピンク色の着物がよく似合ってて。つかれたのかめずらしくごきげんななめで
やっぱりオンナの子はいいわねぇ
いつもとちがう佇まいにこちらが照れてしまって
だまりこんでしまったのを覚えてる
そのとき撮った写真は実家のリビングに飾ってある。ちょっとふくれっつらの圭美と。かたい表情の俺と。微妙な距離感の
『ね!ちゃんと見てる?』
あ…あぁ、見てるよ。圭美の声に我にかえる。式のために衣装の試着に来ていて。白無垢なんかを羽織ってるのを見ていたら、つい想い出に耽ってしまったらしい
もぅ…あてになんないんだから。ぶつぶつ言いながら鏡に向きなおる
あんなにちっちゃかったのにな…鏡越しに見える笑顔の圭美に、あの日の圭美がだぶる
なんか俺、考えた方がおっさんだな…
いやこれじゃお父さんか…
《あれ…?式はいつ?》
※いつのまにか式前提の話しに…
※わらっちゃう話しですが、自分は七五三と成人式と撮った写真があまり変わりません…(・・;)
※本日のラインナップ