S
ゲキチ Gekic(1989)
まだ髪が短い若々しい頃の演奏。近年のゲキチのようなエキセントリックな解釈はなく、スピーディでキレキレの鐘の音を聴かせる。コーダの迫力も相当なもの。あまり市場に出回っていないCDのようだが、是非とも手に取ってほしい1枚。音がいいのも嬉しいポイント。
A
キーシン Kissin(1997)
ライヴ映像。アンコールで演奏しており、テンションの高さが見て取れる。解釈は正統派で、細かい粒がキラキラと輝くように鳴っており、まさに鐘という感じ。ただコーダではわりと大きなミスを連発しており、迫力でゴリ押している。それでも演奏はかなり充実していて、直後のスタンディング・オベーションも当然であろう。
A
野島稔 (1971)
ピアノの音がパサパサしているが、演奏の完成度は高い。模範的であり、コーダにかけては一気に盛り上げる。メカニックには定評のあるピアニストだけにさすがの安定感で、苦しさを見せるところは皆無。
A
ボレット Bolet(1972)
深みのある演奏。キレでバリバリ弾くタイプではなく、温かみのある空間へと引き込まれる感覚。全体的にややスローテンポで進み、キメどころの鳴らしにも余裕がある。ベヒシュタインを愛用していたというところからも、音色の深さは関係しているのだろう。
B
ユンディ・リ Yundi Li(2001)
テクニック的には素晴らしく安定しており、後半の右手オクターヴ連打もかなりのスピードで駆け抜ける。だが、中盤の右手が同音連打した後に半音階で往復するあたりのところで音を間違えて弾いている。コーダ
も音を抜いているようで、ほかのピアニストとは違う聴こえ方になっている。これがなければ間違いなくAにしていたのだが…。
B
シフラ Cziffra(1958)
リストの再来と呼ばれたシフラだが、相変わらずの自由奔放な演奏。随所に軽いアレンジがあり、テンポも目まぐるしく変わる。しかし他では絶対に聴けない演奏なので、一聴の価値がある。
B
オグドン Ogdon(1962)
ブゾーニ版。かなり個性的な演奏。細部が怪しいところもあるが、全体的にかなり速めのテンポで弾いている(4:05)。コーダのペダリングも変わっており、おもしろい演奏であることはたしか。
B
ガヴリーロフ Gavrilov(1977)
猛烈なスピードと打鍵で難曲を弾くイメージのある若い頃のガヴリーロフだが、意外に大人しく始まる。が、終盤に向かうにつれて徐々にテンポが上がっていき、コーダは限界に挑戦しているかのようなスピードに。恐らくコーダだけに関しては今まで聴いてきた中で最速である。
B
ウーセ Ousset(1964)
音質はモッサリしているが、演奏は安定している。流れるように弾いており、推進力がある。リストというよりはラヴェルなどのフランス作品を聴いているかのよう(フランス人のピアニストはこのタイプが多い気がする)
B
フリードマン Friedman(1926?)
ブゾーニ版にさらに独自の編曲を入れている。音質はかなり悪いが、演奏は素晴らしい。音色の変化までは聴きとることが出来ないが、冴え渡るテクニックには舌を巻くほどである。ただ、この編曲で非常に残念なのが、最終盤の両手がオクターヴで離れていくところから急に曲が終結してしまう点。コーダを聴いてみたかった。
B
ジャッド Judd(1978)
チャイコフスキーコンクールで4位に入ったジャッドは、極端にペダルの少ないスリリングな演奏。やや音質がきつい感じもするが、ジャッドのタッチがストレートすぎるのも要因の1つだろう。ライヴ音源ということもあり、勢いがあって最後までエネルギーに満ちている。
C
アニエヴァス Anievas(1971)
個性的な演奏。アーティキュレーションが独特で、不意のアクセントなどドキッとするところがあるが、狙ってやったというよりは技術が追いついていないように感じる。中盤の同音連打のあたりも少し怪しい。
C
アンダ Anda(1964)
ブゾーニ版。全体的に軽めのタッチで弾いており統一感がある。が、個性に乏しくあまり印象に残らない。コーダも熱さよりも冷静さを重視しているのか、淡々と弾いている。
D
ペナリオ Pennario(?)
解釈は正統派で、かなり教科書的な演奏。楽譜をそのまま形にしましたという印象を受ける。コンクールなら高得点をもらえそうだが、何度も聴きたいかと言われると…といったところか。
D
シモン Simon(1957)
ブゾーニ版。篭ったようなモッサリした音質。そつなく弾いており、ブゾーニ版の教科書のような演奏だが、感情的な揺さぶりもなく、やや魅力に欠ける。
D
バレル Barere(1951)
悪い演奏ではないのだが、音質が悪い上に音量の幅もせまく盛り上がりが伝わらない。スピード狂のバレルらしくコーダのテンポはガヴリーロフに迫るものがあるのだが、けっこうミスがある。