秘密って、
誰にでもあるんですか？
夕生は秘密がありません。
ぼかして話したり
あえて話に加えないことはありますが、
秘密っていう秘密はありません。
なので、アンケートなどで目にする
「今だから言えること」
という類いの質問には
滅法弱いです。
しかし夕生は、秘密を発見しました。
秘密というか、
今の今まで忘れてたんですが
ふと思い出したんです。
当時もきっと
なんとなく言わなかったというか
聞かれなかったから
言わなかったというか
きっと聞かれたら
答えていたんでしょうが。
(夕生はそういう人間なんです)
夕生はその時幼稚園児でした。
幼稚園にある花壇の近くで
ある人が教えてくれたんです。
「そのお花おいしいよ」
夕生はどきどきしました。
その人とこんな会話を繰り広げます。
「食べてごらんよ」
「でもお花は摘んじゃだめなんだよ」
「大丈夫だよ、食べてごらんよ」
「いやだよ、きれいだもの」
「でも食べてあげたら、喜ぶよ」
「だれが？」
「お花に決まってるじゃないか」
「お花は食べると喜ぶの？」
「そうだよ、お米や野菜と一緒さ」
「うーん」
「少しだけ食べてごらんよ」
「じゃあ、ちょっとだけだよ？」
そして夕生は
カミツレの小さな花びらを一枚だけ
ぷちっと千切って口にいれました。
別においしくもなく不味くもなく
ただほんのりと
カミツレのやわらかい香りがしたのを
今でも憶えています。
今になってカミツレが
エディブルフラワーでよかったな
と思っています。
その人はそのことを
当たり前に知ってたんでしょう。
草花には詳しい人でしたから。
これでまた夕生の秘密は
無くなってしまいました。
明日からも秘密探しを続けます。
いい夢を。
おやすみなさい。