ごめんなさいと

さようならの海しか

知らない。

この海を出たら

生きられない。

そんな言葉のかたちをした

魚が一匹 

心のなかを泳いでいる。

 

べつな海の魚たちは

いったいどんな顔をして

泳いだり 話したり 

はたらいているのか…

 

しかし

一匹の魚、

安易にとびだし

息絶えるよりは

生きていてほしい。

 

ごめんなさいと

さようならの 

ぬくもりたしかな 

海の中で。

 

 

あなたを

そしてあのひとを

朝陽に すかして みてみたら

どんなにきれいに ひかるのでしょう。

 

そういうひとになりたかった。

いちまいの すかし和紙のような。 


ひっそりと 心の文様を 

守り続けて生きているひとに。

 

 

もじもじしている。

アリでもハチでも

ないような姿の 6ぽん足。

 

飛べないの?飛ばないの?

その細い羽は、誰からもらって、

どうして静かに たたんだままなの。

尋ねれば ちっちゃなハチの目から

なみだがこぼれた ような気がした。

 

飛ばなくていいなら 

飛ばないでいたいの

ここに居ていいなら 

ここに居たいの

でも ここに居ちゃ いけないと

分かれば迷わず飛び去ります と…

 

それなら一緒に

羽なんか要らない場所にいこう。

 

6ぽん足、げんきだせ、

せめてそこまでは 飛んでいくんだ。

 

 

 

 

ほんのすこしだけ、待っていて。

いま、美しいものをみせてあげる。

花は咲かせたままでいて、

でも、実はつけないで、待っていて。

 

その実を、ふくらましきったあとなら、

あなたはきっと、何もかもに満足して、

わたしのやっと用意した風景など、

みても、なにも思わないだろう。

 

そんなこと 命の役割に比して

たいして意味のないことと…

 

でもどうか

花でいるあなたには わかってほしい。 

虫をまち 風をまち

じぶんが目覚められるのかどうか

不安で朝露をこぼすあなたに 届けたいと

思っている。 

 

深い深い霧

手品師のように山をかくして、

馬鈴薯の花たちに話していた。

 

夏の始まる前の夕。

夕闇の裏庭

なにもかもさらけだした 

つつじの花弁

 

あおじろい珊瑚礁から 

やさしいお香のにおいがした
 

この花をかきわけたら

 

あなたのお顔がそこに

うずまっているようなきがして

 

頬 

あるようなきがして

もうこれ以上

ちかづけない

 

ありがとうも さようならも

おやすみなさいも 言えないで

 

約束ばかりをふやしてきた

 

裏庭に咲く方々は

そんなぜんぶを知っている

おもての庭は、ここだと誘う

 

6月のかぜなら、

うすみどりいろをしているはずだ

 

それなのに

つめたい

つめたい風が吹いてくる

だれか

ひとのこころのなかから

吹いてくる

 

いけない

さぼっていちゃいけない

ペンをにぎれ

あたたかくなるまでにぎれ

 

なにも、どうしても書けなくても

じぶんのゆびさきだけでも

ひとの体温でいろ

 

みどりの風

まっくらな夜の山へ吹け

みあげた天井が

まっしろくてなにもなくて

それがとてもうれしかった

 

こころを映し出せるスクリーンを

きっといつもさがしていて。

 

せかいはとても豊かできれいだ

でも、わたしの心の中だって

とても豊かできれいだ。

 

そこにいるのは

わたしではないひとたち

 

あなたや

あの場所や

そういうものだから

ほんとうにきれいだ

 

時に取り出して

それだけを天に

映し出していたい。

 

 

 

 (写真:舞台「Ryoリオ~男爵薯の父・川田龍吉外伝~」2016年5月8日)

 

脚本・演出をつとめさせていただいた

創作朗読劇 『Ryoリオ~男爵薯の父・川田龍吉外伝~』

 

無事終演いたしました。

ご声援、温かな拍手、素晴らしいご感想の数々に、

この土地の方々の心に、感謝申し上げます。

 

安政から昭和をいき、

造船技師、経営者として力をつくしたのち

ひとりの農夫としてその生涯を閉じた男爵、「川田龍吉」。

 

その偉大な背中と向き合う月日は、

キャスト、奏者の背筋を、美しくたくましく

変えてくださったように思います。

 

 

舞台は、

若き龍吉が留学先のスコットランドで出会い、

その後、再会が叶わなかった婚約者、

「ジニー・イーディー」によって語られていく形となりました。

龍吉が彼女を、自らの守護天使と呼んだことにみちびかれた"外伝"でした。

 

 

今後は、龍吉男爵の足跡が残る

函館・北斗等での公演を考えていきたいと思っております。

おひとりおひとりの、志ある人生に寄り添う物語となっていくことを心より願っております。

 

初演をお支えくださった皆様、ご観覧くださった皆様、

台本に命を与えてくださった、未来あふれるキャストの皆様、

言葉を音律と鼓動に還元し、風と光を与えてくださった佐藤先生、

そして、あらゆる守り人の皆様…心からの感謝と御礼を申し上げます。

 

 

ひとつ舞台は終わりましたが、

何かいっそう、真摯に向き合っていかねばならない、

そのような厚みと重さを伴う心境が、一同の胸に残されております。

 

歴史と、現実と、受け渡されてゆく願いとのはざまで、

これからも、希望と肯定の音を、探し続けたいと思います。

見えないたすきを、にぎりしめて。

 

ありがとうございました。

 

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朗読音楽劇「Ryoリオ~男爵薯の父・川田龍吉外伝~」

脚本・演出 高橋リサ

音楽・舞台監修 佐藤三昭

朗読 ジニー:佐々木紫 リオ:山下堅一

演奏 ことの音ユニットNeriネリ(七飯男爵太鼓創作会)

特別協賛 HAKODATE男爵倶楽部HOTEL&RESORTS

そとをふきわたっている

この風はこどもだ、

そんな気がした

 

乳歯がはえている

 

そこに立つもの

咲くもの

噛んで噛んで

なにかを確かめている

 

すこしだけ

乱暴に吹いている でも

こわがらなくても

だいじょうぶ

 

この風は、

こども

 

そっとしておこう

風の子がこのふるさとの

こころをわかって

あんしんするまで

 

そよかぜの成りかたを

わかるまで

この度の大きな地震により

大変な思いをされている方々へ

心よりお見舞いを申し上げます。

 

家屋のなかで、そとで

倒れたり壊れたりしてしまった

ちいさなもの、おおきなもの、

ひとつひとつを思います。

 

すべて宝物でかこまれて

わたしたちはいきていること

あらためて、おもいます。

 

しずまりますように。

大地、そっとおさまる場所を、

どうかもういちどみつけてください。