わたくしの糸の先のお相手は存外近くにおりました。

幼き頃からその方を運命の人と信じて大切に想って参りました。それはもう大切に。

その方はわたくしが言うとわざとらしいのですけれど
学校中の女生徒が憧れるような素敵な方です。

陸上部のエースで地区大会には他校のフアンも集まりました。

切れ長で涼やかな瞳が少々近寄りがたいのもまた
魅力的なのでございます。

そしてわたくしが何より嬉しゅうございましたのは
わたくしにだけ優しく笑って話しかけて下さることでした。

あぁ、やはり、これは運命なのだと。
お相手とわたくしの小指を交互に見つめては胸を高鳴らせたものでございます。

しかし、少々事情がございましてわたくしは思いの丈を伝えられずにおりました。

それはきっとお相手も同じであったかも知れません。

時は過ぎ、小 中 高と二人は親密なまましかし
関係も変わらぬまま、お相手は上京して行きました。

わたくしにはなんの憂いもございませんでした。

糸は変わらずに強く二人を繋いでいましたから
必ず時が来れば結ばれるものと信じて疑わなかったのでございます。

それがどういったことでしょう!

その方はある日突然、一人の女性を連れて帰ってきたのです!
無論、糸の繋がっていないお方ですよ!
紛れもなく糸はわたくしと繋がっているのですから!

わたくしはがっくりと肩を落としました。
ましてや結婚するとまで聞かされるとは思いもよりません。まさに青天の霹靂とはこの事です。

あなた様ならどのようになさいますか?
えぇ、まぁ、もう遅いのですけれど、、、
参考までに伺ってみたかったのです。

そうです、わたくしの姿を見れば分かりますよね。
今日がわたくしの糸のお相手の、婚礼の日なのでございます。