運命の赤い糸を信じていますでしょうか?

わたくしは信じております。

信じるも何も、見えるのだから仕方がありません。

乙女の戯言だとか、夢見がちが過ぎるとか
言われても仕方がないのでございます。

ほら、わたくしの指からもあなた様の指からも
ふわふわと先へ漂い、いずれ誰かの元にたどり着くのでございます。

え?見えないって?それは残念でございます。
殆どの方には見えないようなのです。
少なくともわたくしはまだ一度も見える方に
お会いしたことがありません。

赤い糸で結ばれたもの同士が自然と結婚するのか、ですか?
いいえ、結ばれないもの同士の方も多くいらっしゃいます。

それは勿論!口が裂けても言えやしません!
そうと信じてめおとになるのでございましょうから。

実のところ、わたくしの父と母もそうでした。
結ばれてなかったのでございます!
そんな最中にわたくしは産まれたのですけどね。

残念ながらすでに父と母は人生を共にしておらず
今はそれぞれきちんと繋がった人を見つけて添い遂げておりますよ。

やはり運命の赤い糸ですから、そのご縁は強力なのでございます。

まぁまぁ、そんなに慌てないで下さい。
あなた様の先もほら、あのジャングルジムの間を通ってブランコをくぐって、そこの水飲み場でゴクゴクとなんて勢いの良い方、あの方と繋がっておりますよ。

ご主人さまでいらっしゃいましたか、それはようございました。長く添い遂げられるでしょう。

時々ですけれどもね、大きい声では言えないのですが
ご主人さまと他所の奥様が繋がっているなんてこともね
まま、あるのでございます。勿論ご本人にはご主人さまと繋がっていると嘘を申しますよ。

あぁ、すみません。あなた様のことは嘘ではございませんからご安心くださいませね。ふふふ。

わたくしの糸でございますか?

見ず知らずのわたくしの相手を気に掛けて下さるのですね。ありがとうございます。

気になるのは当然ですか?それもそうでございますね。

それでは少しお話ししてもよろしいですか?
お察しの通り、わたくしも丁度誰かに聞いてほしいと思っていたところなのです。

親切なあなた様にどうかわたくしの糸の話をさせて下さいませ。