「91Days」第12話、最終話の感想です。

 

個人的妄想解釈というか考察というかに

突っ走ってる。

 

 

※ネタバレします。

 

 

◎「91Days」

 

 

☆第12話「汚れた空をかいくぐり」の感想です。

 

アヴィリオのドン・ガラッシア殺害により、

ガラッシアファミリーに全面攻撃を仕掛けられることになった

ヴァネッティファミリー。

もはやその存続は不可能。

後は灰になるの待つだけ・・・。

 

 

 

最終話アバン。

全てを知り、怒りと憎しみに染まったネロが

迎えに来たとき。

憤怒の表情で隣に立つネロに対し、

振り返り、ただ静かに笑ってみせるアヴィリオが。

が。

が・・・っ。

 

もうこの時点でハート撃ち抜かれました。

ここで笑ってみせるのか。

アヴィリオ・・・お前って奴は・・・

最高ですありがとうございますありがとうございます。

 

 

そんな風に始まった最終話。

 

前のドンだったヴィンセントが死に、

幹部も軒並み殺され、

構成員も端から殺されていくヴァネッティファミリー。

もう後はいつ消滅するか待つだけの状態です。

 

それでも、最後まで矜持を保ち意地を貫く

ヴァネッティファミリーの人々。

 

特にティグレ!

まさかの最終回まで生き伸びたティグレ!

初回から怪我ばかりで

いつ死ぬか今死ぬかと思われていたティグレ!

途中から「怪我はするけど不死身」扱いになったティグレ!

最終話ももしかしたら・・・・・・と思わせつつ、

あの漢らしい死に様。

格好良かったです。

 

それにしても・・・結局、

ティグレが最後まで残ったネロの側近でしたね。

序盤のティグレから誰がこれを予想しただろうか。

頑張ったな、ティグレ。

お疲れ、ティグレ。

 

 

そんなティグレとも別れ、

一人になったネロはアヴィリオと対峙しに行きます。

 

・・・いや、まあ、チェロットの協力とかあったけど、

そこは省くというか、まさかのチェロット生き残り。

おめでとう。

 

で。

本題のネロとアヴィリオの対峙。

全部自白して

「死ぬ以上の苦しみを与えてやろうと思ったのに

ヴィンセントはくたばって残念だ」

というような挑発をするアヴィリオ。

それに怒りを露わにして銃口を押し付けるネロ。

ついに、ついにキービジュアルのような状況が・・・!

 

と、思ったら。

 

何故かネロさんとアヴィリオさんの逃避行開始。

 

思ったよりもずっと静かな雰囲気に少し戸惑いましたが、

まあ、復讐も成し遂げて、完全に燃え尽きた、

もういつ死んでもいい早く殺してくれオーラを出しまくりの

アヴィリオに、ただ殺すという手は使えないよなあと

ネロの鋼の自制心に感嘆しながら思いました。

 

そして。

復讐を成し遂げて本性曝け出したアヴィリオと、

真相を知り怒りと憎しみを抱えるネロの、

奇妙な二人旅がしばらく続き・・・・・・

 

まさかここであのコメディ4話が効いてくるとは

思いませんでした。

今の二人の憎しみと悲しみで繋がったような、

苦しくも近しい奇妙な関係性のなかでの旅を観ていると、

以前の表面的には友人だったような、相棒だったような、

あの殺伐としつつも愉快で明るい旅が思い出されて・・・

心が・・・心が苛まれる・・・。

くそう、あのふざけた4話はこの時のためか・・・。

沁みる・・・。

 

ちょっとした二人の言動が

いちいち心に沁みて堪りませんでした。

 

ネロが肉を前に「美味そうだ」と笑ってみせる表情。

アヴィリオに煙草だけ投げてやる行動。

食事はとらないのに

煙草だけは深く美味そうに吸って吐くアヴィリオ。

 

・・・普通だったらなんてことない描写なのに、

いちいち沁みる。

 

 

それから。

二人で焚火を前に会話する場面。

 

復讐を遂げて「満足したか?」と聞くネロに

 

「復讐を果たし、家族の死に報いれば、

生きる理由を取り戻せると思った」

「だが、何も残らなかった」

「すべてはむだごと」

 

空虚な目で淡々と答えるアヴィリオ。

 

「すべてがむだごと」

長年の夢がやっと現実になったその日に

全てを奪われ、失意のなか死んだ父と同じ言葉。

その言葉を、奪った側のアヴィリオが言う。

 

激昂するネロ。

 

ネロ「あいつらの死は、一体なんだったんだよ!!」

「なんで・・・俺を、殺さなかった・・・」

「お前を・・・信じてたんだぞー!!」

アヴィリオ「だったら俺をあの時殺してればよかっただろ!!」

「7年前のあの夜、お前が俺を撃ってれば・・・」

 

初めて叫び、初めて涙を見せるアヴィリオ。

 

この場面、最高でした。

 

いつでも人の上に立つ器にふさわしいように

鷹揚な態度を見せていたネロが、

初めて見せた余裕のない虚飾のない本音。

いつでも無感情に徹してきたアヴィリオの

ひた隠しにしてきた哀しい思い。

 

初めて二人が本当に会話し、

それと同時にお互いを分かり合ってしまったんだろうなと

思うと、切ない気持ちがこう・・・。

今はもう完全に同じ立場となった二人。

アヴィリオにはネロの、

ネロにはアヴィリオの、

心に抱えた思いが痛いほどわかってしまうんだろうなと思うと・・・。

哀しく切なく胸が苦しい・・・。

何もかも壊れた今になってどうしようもなく分かり合えてしまう。

苦しい・・・。

 

加えて。

アヴィリオが、あの暗い何もない一人きりの部屋で、

7年間、ずっと

「何故自分一人だけが生き残ってしまったのか」

「自分の生きる意味は何か」

と、答えの出ない問いを何度も何度も何度も

繰り返していたのかと思うと・・・思うと・・・

ああ、胸が苦しい辛いありがとうございます。

 

ここ、最高でした

 

 

そして。

その会話を契機に、

二人の関係も少しずつ変化していきました。

 

互いに仇として憎み合う関係のはずなのに、

アヴィリオはネロの皿から食事を貰い、

ネロはアヴィリオに運転させ、

(いついかなる時もネロへの嫌がらせは忘れない

アヴィリオさんのその姿勢、大好きです)

時には昼寝し、

時には運転している隣で寝ながら、

旅を続ける二人。

 

奇妙な友人関係。

不思議な信頼関係。

 

 

その果てに。

海に辿り着く二人。

 

アヴィリオが行きたいと言った海。

ここが終着点になると

旅の最初から二人とも分かっていた海です。

 

その波打ち際を並んで歩きながら

ネロがアヴィリオに語りかけます。

 

ネロ「生きてることに理由なんてもんはいらねえ。

   ただ、生きるだけだ」

 

それを聞いたアヴィリオ。

 

アヴィリオ「俺がお前を殺さなかったのは、

       お前を殺したくなかったからだ」

 

こう応えてネロの前に出ます。

 

そして、

前を歩く背中に銃を構えるネロ。

 

銃声。

 

はっきりとした描写はされず。

 

 

でも、個人的には、

ネロはアヴィリオを撃ったのではないかなと思います。

 

直前の二人の会話の意味。

まだうまく捉えられなくて居心地の悪い気分でいますが、

一応、

ネロは「生きる理由も何もない」と言ったアヴィリオの

空虚だった人生を、それでよかったんだと肯定してやり、

アヴィリオはネロに「殺したくなかった」と本音を言うことで、

自分たちの友情の全てが嘘ではなかったと伝えて、

それでアヴィリオの死の準備をしたのかな・・・と、

今はそんな風に思っています。

 

7年前は目を閉じてしまって撃てなかった背中を、

今度は目を開けてしっかり狙ったネロ。

 

憎しみにかられた復讐心からではなく、

友人として、「兄弟」として、

アンジェロの生を終わらせてやった。

 

そんな場面だったのではないかと、

そう私には見えました。

 

その後、

一人車で去るネロとすれ違う、ガラッシアの追手の車。

遠からずネロも死ぬでしょう。

 

 

後には誰も何も残らない。

それでもどこか清々しい気分がするのは、

ネロとアヴィリオが最後には友人として「兄弟」として

すれ違わず分かり合ったままで別れたからかもしれません。

 

この作品内では、

友人、家族、とりわけ兄弟は、

すれ違い、殺し合うものとして描かれてきました。

 

ヴィンセントとテスタの友人関係の崩壊から始まり、

フラテと義理の兄ロナルド、

ロナルドとネロ、

ネロとフラテ、

コルテオとアヴィリオ、

ヴィンセントとガンゾ、

沢山の友人、家族、兄弟たちがすれ違い、

それゆえに殺し合ってきました。

 

最後に残ったアヴィリオとネロもまた

その運命からは逃れられず、

片方が片方を殺すことで終わりを迎えました。

 

しかし、この二人は他とは違い、

すれ違ってはいなかったように思われます。

 

いや、復讐を終えるまではすれ違っていたかもしれません。

アヴィリオの友情は偽りを多く含んでいました。

けれど、復讐を終えた後、

二人が同じ立場になって同じ思いを抱いてからは、

彼らは友人として兄弟として

しっかりと互いを理解していたと思います。

 

こんな言い方はおかしいけれど、

作中で一番「うまくいった」友人であり兄弟だったのが

アヴィリオとネロだったのではないでしょうか。

 

一番、真実に、友人であり、互いに情を抱いていたのは、

コルテオとアンジェロだったでしょう。

けれど、

どんなに互いに友人として大切に思っていても、

最後までコルテオはアンジェロと生き直したかったし、

アヴィリオは復讐を捨てられなかった。

コルテオの死後でさえ、

アヴィリオの見るコルテオの幻は

本物とは正反対の復讐を後押しする影だった。

どうしようもない哀しいすれ違いがそこにあります。

 

けれど、

アヴィリオとネロは。

互いに自分以外何もないという同じ境遇になって

同じ思いを抱きました。

互いに互いを仇として憎みながら、

友人として兄弟として情を抱いて、

同じ場所を目指して旅してきました。

最後も「殺してくれ」と言葉にせず伝えたアヴィリオに

ネロはしっかりと応えました。

 

彼らは作中で唯一、

すれ違わなかった兄弟だと思います。

 

だからこそ、

彼ら二人の死によって物語に幕が綺麗に降りた。

彼ら二人の死によって復讐の連鎖が終わった。

 

そう私は思っています。

 

 

最後に二人の足跡が波で消される描写。

憎しみや恨みや悲しみや情や、

色んなものがあったけれど、

後には何も残らない。

それでも、その絵が、波が美しいので、

消えていくことは虚しくもあり、

また救いなのかな、と。

そんな風に感じました。

 

 

 

1クール、楽しく、

最後になればなるほど引き込まれた物語でした。

ありがとうございました。