「スタミュ」
第12話、最終話の感想その1です。

まだ書いてたよ。


※ネタバレします。


◎「スタミュ」
『スタミュ』ミュージカルソングシリーズ/NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
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☆第12話「第12幕」の感想その1です。

台風の中の綾凪祭。
仮設ステージの倒壊により、
野外での公演は全て中止となる。



最終回らしいピンチから始まった12話。

なんか・・・良かったです。
初見の時はちょっと拍子抜けの気分もあったんですが、
でも、何回も観ていると、なんともいえない、こう、
最終回だったなあ・・・という気になる最終話でした。
全てがうまくまとまった感じ。
良かったです。


そして。
この最終話を観て、鳳について考えていたことが、
自分の中で少し腑に落ちた感じがありました。
妄想もかなり入ってると思いますが・・・。
まあいいや。


個人的には以前から

鳳、柊の兄弟は「アヤナギ・ショウ・タイム」の
王子なのではないか。

という思いがありました。

鳳は玉座を捨てて夢を追う自由の旅に出た王子。
柊は玉座に着いて夢と自由を諦めた王子。

二つの選択肢の、どちらか一方の道に進んだ
(進まざるを得なかった)王子の姿が、
この二人によって描かれているのではないか。

そう思って観ていました。

ただ、ずっと疑問がありました。

玉座に着く道を進んだ王子である柊は、
それによって得たもの、失ったものがはっきりしている。

彼が玉座について得たもの。
華桜会の権力と尊敬と信頼。仲間。
彼が玉座について失ったもの。
心のままに躍る自由。半身である兄。

柊については、玉座に着く道を選んだことで
得たものと失ったもの、そして、それによる
彼の長所と短所が明快に描かれています。

華桜会のトップとして、
また綾薙学園を継ぐものとして、
伝統に相応しい優秀な人材を育成する。
この点にかけて柊に適うものはいないでしょう。
これが彼の長所。

一方で、
綾薙の伝統にそぐわないような才能ある人材を見過ごし、
そもそも演者の根本的な原動力である情熱を軽視し、
幅のある思考を失い、
色々なものを取りこぼしてしまう。
これが彼の短所。

杓子定規だからこそ優秀で、
杓子定規だからこそ盲点がある。

玉座に着く道を選んだ柊の、得たもの、失ったもの、
それからくる長所、短所は分かりやすいです。


しかし、鳳は・・・。
柊が一方の道を選んだことによる長所短所を
抱えているなら、鳳もそうであるはず。
何かを選択することは何かを切り捨てることでもあるから、
鳳にも柊のように得たもの、失ったもの、
長所短所があるはず。

なのに、鳳に関しては
長所短所がいまいち見えないでいました。

得たもの、失ったものは分かります。

鳳が自由の道を進んで得たもの、失ったもの。
得たのは、心のままに躍り歌う自由。
伝統に縛られない在り方。情熱。
失ったのは、スター枠、華桜会のような地位と権力。
仲間。半身である弟。

彼が一方の道を進んで得たもの、失ったものは
このようなものでしょう。

ただ、そこからくる彼の長所短所・・・
いや、短所が分からない。

長所は分かります。
チーム鳳メンバーのように、
伝統にそぐわず、技術が及ばなかったり、
精神的に未熟だったり、色々と欠点があっても、
何かしら輝くものを持っている者を見抜く目を持っている。
彼らを彼らなりに輝くように育てる才能を持っている。
演者にとって大切な情熱の素晴らしさを
伝えることが出来る。

鳳は自由を選んだからこその、
柊にはない長所が幾つもあります。

ただ・・・短所がよく分からない。
鳳も一方の道を選択した以上は、
どこか短所があるはず。
柊にはあって鳳にはないもの。
それは何だろう。

それが分からないまま、
ずっともやもやしていました。


しかし。
最終回でやっとずっと分からなかった
鳳の短所が見えたような気がしました。

休学して何をしていたのか問われた時の鳳の答え。

鳳「逃げていたのさ、あいつらから」

これが鳳の自由を選んだゆえの代償、
彼の短所なのではないでしょうか。

綾薙学園で、伝統を何より重んじる場所で、
それでも自由を望むなら、一人になるしかない。
一人になるということは、仲間を捨てるということ。
仲間を捨てて逃げるということ。

自由のために一人になる。
逃げる。
これが鳳の短所なのでしょう。

思い返せば、
鳳は何度も柊に「逃げた」と非難されていました。
昔、チーム月皇だった頃、仲間を裏切って出て行った。
柊も置いて逃げた。
そして、今も華桜会メンバーで揉め事が起こったら、
何も言わずに華桜会を抜けて出て行った。
また逃げた。
同時に、チーム鳳のメンバーからも逃げた。

本当は、もう少し向き合いようがあったと思うんです。
チーム月皇のメンバーと意見が合わなかった時、
ただ黙っていなくなるのではなく、
もう少し突っ込んで話し合ってみるとか。
今回の華桜会のいざこざでは・・・・・・
あれはチーム鳳を人質にとられたようなものだから
華桜会メンバーと話し合うのは厳しいかもしれません。
でも、完全にとばっちりのチーム鳳のメンバーには
「頑張れよ」と言ってただ消えるのではなく、
もう少し信頼して説明するとか。
何かもう少し手はあったと思うんです。

でも、鳳はただ消えることを選んだ。

多数の人間が協力してこそ舞台が成立し、
感動を作り上げることのできるミュージカル。
それなのにいつも仲間を捨ててしまう。
逃げてしまう。

これが自由を選んだ鳳の失ったものであり、
短所でしょう。



互いに別々の道を選んだからこそ、
それぞれに長所があり、また短所がある。
どこかで妥協点を見つけ合えれば
一緒に遊ぶことも出来るかもしれないけれど、
別々に歩む以上それは出来ない。
そんな双子のもどかしい有り様。
それが最終回でやっとクリアに見えた気がしました。


で、2に続く。