「蟲師 続章」第四話の感想です。


※ネタバレします。


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☆第四話「夜を撫でる手」の感想です。

夜の山で、甘く饐えた匂いを嗅いだギンコ。
不審に思っていると、突然体の自由が効かなくなり、
闇のむこうに黒い人影が見える。



全ての生命の源である「光酒」。
光酒が腐ってしまったものである「腐酒」。

その腐酒を取り込んだ血を受け継ぐ兄弟が、
今回の主役でした。

生命にとって毒となる腐酒。
まれに取り込める者は出ても、
その影響は子子孫孫にまで及ぶ。
今回の兄弟もその例に漏れず、
弟は血を吐いて死に至る病に侵され、
兄は体から甘い匂いを発して獲物を呼び寄せ、
生きたまま狩る能力を有していた。

けれど、本当に恐ろしいのはそんな表面ではなく。
静かに変わっていく兄の様子。
腐酒に侵されて狂っていく兄の心が、
静かで圧迫感のある恐怖を生んでいました。


綺麗な頃の兄「怖かねぇよ。俺にだって力はあんだ。
         お前は俺が守ってやっから」

それが。

腐りかけの兄「うるせぇなぁ」
        「俺はなぁ、もう二度とごめんなんだよ」
        「狩られるかもしれねぇ側に戻るなんてなぁ」

お兄ちゃん、怖い。
弟を狩られる側に残したまま、
自分は狩る側ですか。
いつか狩られるかもしれない恐怖を弟に与え続けて、
それでよしとして生きるんですか。
そしていつかはどうなるんですか。どうするんですか。
お兄ちゃん、怖い。腐ってる。怖い。


しかし今回は、そんな兄の静かな狂気が、
その狂気が生む恐怖が、
何ともいえない魅力もまた醸し出していたと思います。
怪談やホラーめいたものが好きな私には堪らなく甘美で、
ああこれがお兄ちゃんの放つ、腐った光酒の甘い饐えた
にほひ・・・ああ・・・狩られてしまふふ・・・・・・。

えーと。

最初に夜の山でギンコと出会った時の、
「なんだ、人か」という、とても残念そうな声を発する、
顔も見えない黒いだけの影。

生きている鹿が意思を奪われ、
押さえつけられる姿。

「俺は別に何も変わらんだろ」と言いつつ、
弟を撫でようと迫ってくる痣のある手。

生きたものを狩りたいという欲求のためだけに殺され、
その後は興味を失って無造作に放置された獣たち。

ギンコに「うるせぇなぁ」と言い、
闇の中で手を掲げる黒い黒い影。

どれもこれも恐ろしく、
恐ろしいからこそ惹きつけられました。

お兄ちゃん、怖い・・・。
素敵・・・。
ああ、狩られてしまふふうふふふ・・・。




えー。
要するに。
酒は飲めども飲まれるな。
そんな話だったと・・・思います?