「蟲師 特別編 日蝕む翳」の感想です。
※ネタバレします。
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☆「特別編 日蝕む影」感想
日食の時にのみ現れる蟲「日蝕み」。
日食で影に隠れた太陽に
大量の蟲を引き連れて接近し、
日食が終わった後も留まって日光を遮り続ける。
日蝕みに太陽を奪われた地上のものや人間は、
次第に疲弊し、蝕まれていく。
す、素晴らしい・・・。
相変わらず素晴らしい・・・。
もうその言葉しか出ませんでした。
アニメ化は5年ぶり?8年ぶり?ですか??
しかし、全くといっていいほど時の経過を感じさせない、
間にそれほどの年月が流れたとは信じられない、
昔と寸分違わぬハイクオリティーでした。
つい先週まで放送が継続されていたかのような、
そんな錯覚さえ覚えさせるほどの自然な復活作。
そして、この特別編の元となった原作も、
アニメとほぼ同時期に発表されたようですが、
これまた昔と全く変わらない、違和感など全くない、
自然な物語の紬ぎようでした。
もう感動、というほかはありませんでした。
この蟲師という作品は、不思議な存在である蟲と、
その蟲と関わってしまった人間達の生き様が
淡々と静かに、しかし叙情的に描かれています。
蟲と関わるなかで表面化する、
人間の悲しみや怒りや絶望などの負の側面。
それと同時に描かれる、
人間の思いやりや情や強い意志などの正の側面。
両者が絶妙なバランスを持って物語を形作り、
最後に深い余韻を残して終わります。
今回の物語も今までの例の漏れず、
複雑な心理模様が描かれていました。
同じ日、同じ時、同じ場所に生まれた女の子の双子、
ヒヨリとヒナタ。
年も性別も生まれた家も何もかも同じ。
けれど、一人は運悪く受けた蟲の影響で
日の下に出られず、赤ん坊の頃からずっと
雨戸を締め切った家の奥で暮らすだけの生活。
そして、もう一人は普通の子と全く変わらない生活。
偶々、蟲の影響を受けたか受けなかったか。
ただ運が良かったか悪かったか。
それだけの違いで人生を大きく変えられてしまった
双子。
そこから生まれる両者の複雑な思い。
自己中心的な思い。
無垢な思いやりからくる無自覚な傷つけ。
自己愛と他罰的思い。
自暴自棄な思い。
そして、底にある互いへの純粋な愛情。
二人の複雑な心が繊細に丁寧に描かれ、
最後には美しく昇華されて
余韻を持って終わっていました。
同時に、
常にそこにあると信じて疑わないもの。
そこにあって温かいのが当然だと思い込んでいるもの。
そういったものの有難さを、
物語の余韻とともに噛み締めさせられました。
最後に描かれていた、
ギンコの上に広がる澄んだ青空。
まるで本物の青空を見上げている時のような
清々しさを感じました。
目に沁みました。
静かなエンディング曲を聴きながら、
ああ、良かったなあと噛み締める瞬間。
こんな時間がまた4月から味わえるのかと思うと、
今からもう幸せでなりません。
ありがとう、蟲師。
ギンコさん、相変わらずかっこいいですね!