「超訳百人一首 うた恋い。」第十三話の感想です。
やっと最終回の感想です。
※ネタバレします。
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☆第十三話
「定家と式子 式子内親王 権中納言定家」
の感想です。
最終話です。
となれば、やはりこの人が主役です。
藤原定家!
歌道の家に生まれ、
歌人として名高い藤原俊成の息子で、
小倉百人一首を編纂した張本人!
そして、このアニメではいつも冒頭で謎のコントを
披露してきた芸人!
体を張った笑いを提供し続けてきた芸人!
時には中盤にも唐突に登場して、余韻もへったくれも
全てぶち壊していった少し迷惑な芸人!
あまりにも芸人イメージがつき過ぎてしまっていて、
大丈夫ですかね・・・。
ちゃんとこう・・・最終話らしくなるんですかね・・・。
ちょっと不安が・・・。
あ、いや、でもそこは逆にシリアスとのギャップに
キュンとくるのかもしれない。
そうだよ。
いつもお調子者を演じていた人が、突然に真剣に
なったりするとキュンとくるじゃん。
あんな感じだよ、きっと。
大丈夫だよ、きっと。
・・・なんて思いつつ、観始めてみたら。
お笑いノリが抜けてませんよ、定家さん!
ていうか、反抗期!?
19歳の中学生!?
歌の家に生まれ、歌人である父にもその類稀な
歌の才を認められている定家。
しかし。
本人は全く家を継ぐ気はなし!
まるでなし!
さっぱりなし!
蹴鞠で世界を目指す!と言ってみたり、
泣きながら縋り付く四歳の子供を縁側から蹴落として
出家したワイルドアウトロー西行に憧れてみたり、
「家は継がない!親の敷いたレールになんか
乗ってやるもんか!・・・出家もいいよね、パパ!」
とのたまってみたり、
とにかく反抗期。これぞ正しき反抗期。の定家。
そんな定家に頭を痛めていた父・俊成。
歌を教えている式子内親王に息子の愚痴を
零したところ、式子内親王が定家を自分に
会わせてみないか、と提案。
新しい環境を与えてみれば何かが変わるかも。
ということで、定家は式子内親王に会うことに
なったのです。
そして。
式子内親王に会った定家は。
反抗期中学生(19)から、
恋する浮かれ青年にランクアップ!(?)
「父上。
僕は父上の後を継いで立派な歌人になります!」
そう宣言したかと思ったら、
「素晴らしい方でした~。ああいう方を真の貴婦人と
呼ぶのでしょうねえ~」
と式子内親王にデレデレ。
いやいや。式子内親王は雲の上の住人だから。
手が届かないから。正気に戻れー!
と父が諌めても、
「空を飛びたいと雲に思いを馳せるのは
自由じゃないですか」
とるんるん。
定家は間違った方向から間違った方向へ
方向転換して走り出した!
が。
やはり式子内親王は雲の上の人。
そこはしっかり理解している定家。
式子内親王と「ごっこ遊び」として恋の歌を
詠み交わしつつ、忍ぶ想いに身を焦がされるだけ。
そんな折、定家に結婚話が持ち上がった。
結婚なんてと思いつつ、冗談めかして
式子内親王にそのことを話す定家。
すると。
「その話、お受けなさい」と静かな声。
「そこは冗談で返してくださいよ~」と定家が笑うと、
「たまには真面目な話をしましょう」と誤魔化しが
許されない雰囲気に。
静かに、淡々と、まるで子供を諭すように
結婚を勧める式子内親王。
それに、定家は、ついに、
「僕は貴方が好きなんです!
だから、結婚したくありません!」
「好いた惚れたを遊びと称して、
僕を馬鹿にしてるのは貴女の方じゃないか!!」
と、二人を隔てる几帳を捲って手を掴む!
ひゃー!!
なんだ、これ!!
キュンときたー!!!
定家さん、やるー!!!
でも、やはり二人の間には越えられない壁が
あったのです。
「ままごと以上のことを私に求めないで!」
「・・・迷惑です」
と肩を震わせる式子内親王。
しかし、それに定家が「もう来ません」と去ろうとすると、
「そんなこと言わないで・・・。また遊びにいらして・・・」
と袖をつかむ手が。
うわー。
うわー。
ずるい女だよー!
本人もどうしようもないけど、ずるい女だよー!
小憎らしいほどずるくて魔性の年上お姉様だよー!
その酷な仕打ちに「酷い女に捕まった」と思いつつ、
恋歌を詠む定家。
うひょー!
どうしても叶わない恋って切ないー!
掴んでも掴めない雲って切ないー!
恋に真っ直ぐな青年と狡くて薄幸なお姉様の
悲恋って美味しいー!(?)
・・・取り乱しました。失礼。
それから時が経ち、二人の悲恋も終わりました。
式子内親王の薨去によって。
歌う意味を見失った定家は、彼女の思い出と共に
歌を捨てようとします。
しかし、「歌だけが自由なの」と言っていた式子
内親王を思い出し、彼女がいなくてもずっと恋をし、
ずっと歌を詠んでいこうと決意を新たにしました。
ずっと歌を詠んで。
ずっと歌を伝えて。
ずっとずっと未来の人に
変わらない人間の心を伝えられたら。
それはきっと素晴らしい。と。
最初はコメディノリでどうなることかと思った
最終回でしたが、終わってみればやはり切なく、
やはり心震わせられ、そして一番歌への思いを
感じた一話となりました。
この最終話だけでなく、この作品は全体を通して
笑いあり、切なさあり、幸福あり、涙あり、とバラエティに
富んだ内容で、時には人生の終焉や虚しさなどの
マイナスイメージのものすらしみじみと情緒に富んで
感じさせられ、とても心揺れ動かされました。
今は遠い平安の時代に、今と同じ人間の心模様を、
その息遣いを感じさせてくれる。
素敵な作品だったと思います。
面白かったです。