読み終わったので、適当に感想を。
※ネタバレするかもしれません
◎「不連続の世界」
- 不連続の世界 (幻冬舎文庫)/恩田 陸
- ¥600
- Amazon.co.jp
流れるようにマイペースに生きる塚崎多聞。
彼が出会った不思議な物語が5編収録されています。
多聞が散歩道で出会う知人。
彼は、ある家に寝泊まりすると同じ夢を見るという。
10代の子供ばかりが集められた巨大なビル。
御馳走がテーブルいっぱいにならべられ、
笑顔で歓談する子供たち。
でも、そのビルからはきっと出られない。
不思議で不気味な夢。
そして、知人の呟いた「こもりおとこ」。
見るとよくないことが起きるという「木守り男」に
多聞は出会う。
そんな「木守り男」。
聞いた者が死にたくなるという噂のある歌。
歌手は「セイレン」と呼ばれるが、
身元は一切不明である。
多聞は興味を持ち、情報を収集するが・・・。
そんな「悪魔を憐れむ歌」。
メジャーデビューが決まったバンドのクリップ撮影の
ため、彼らの故郷を訪れた多聞たち。
しかし、バンドメンバーの一人である保が、
妙に情緒不安定な様子。
多聞が聞くと、彼は「自分が映画の撮影をしている
現場に遭遇すると、周囲の人が死ぬ」と打ち明けた。
そんな「幻影キネマ」。
・・・など、独特の味わいの作品が5編、
収録されています。
主人公・塚崎多聞は「月の裏側」という長編にも
登場したキャラクターです。
けれど、別にそれを読んでいなくても、
この作品は楽しめます。
ていうか、
私、「月の裏側」を読んだはずなのに全く覚えてない!
多聞も登場したような気がするけれど、登場してないと
言われたら納得しそうなほど覚えてない!
でも大丈夫だったから大丈夫!
・・・・・・読んだはずなのになあ。
何故こうも脳から消えているのか・・・。
えーと。
で、この「不連続の世界」は、
上に書いたように中編が5つ収められています。
どれもこれも現実と非現実の境が曖昧なような、
ホラーのようなミステリーのような、
ぼんやりとしたところに迷い込むような、
そんな恩田さん独特の味わいのある作品です。
一応、ミステリーとして謎解きのある、解決のある
作品が多いですが、それよりももやもやとした
不可思議な雰囲気が重要な作品たちだと思いました。
分かったようで分からなかったり。
現実のようで悪夢のようだったり。
今がいつなのか、自分が相手が誰なのか分からない。
そういったぼんやりした恐怖や不安に
なんとなく絡めとられる。
それが醍醐味なんだと思います。
かっちりしたミステリーやホラーを求めると
肩透かしになるかもしれません。
しかし、私は恩田作品のどこまでも境が曖昧な
雰囲気が好きなので、この短編集(中編集?)は
面白く読めました。