「超訳百人一首 うた恋い。」第四話の感想です。
※ネタバレします。
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☆第四話「康秀と業平 文屋康秀」の感想です。
宗貞の屋敷で開かれた宴会で、
周囲の意表をつくような歌を詠んだ文屋康秀。
だがその直後、在原業平にそれを
小馬鹿にするような歌を詠まれてしまう。
どうやら先日、こっそり言ったつもりだった
業平の悪口が耳に入っていたらしいと知った康秀。
身分の高い業平に嫌われては堪らない、
出世に響く、とすぐさま謝罪に行ったが、
何故か二人で小野小町に夜這いをかけることに
なってしまう。
今回は恋の話ではなく、
「六歌仙」のなかの三人、
在原業平、小野小町、文屋康秀の、
奇妙な友情の話でした。
いい話でした。
・・・と、私は思ったけど。
血筋は申し分のない高貴さだが、
政治的なことで出世を諦め気味な在原業平。
強い上昇志向で念願の宮仕えを果たし、
帝の寵姫にまでなったものの、
新たなしがらみを感じているらしい小野小町。
貧乏貴族の出で出世を強く望むが、
周囲の高貴な人々に卑屈になるばかりの
文屋康秀。
三人は三人とも、立場も大切なものも目指すものも
違う。
けれど、それぞれがそれぞれに抱えたしがらみの
なかで、同じ様にもがいたり苦しんだりして生きている。
そして、三人は三人とも歌に自由を求めている。
その様が複雑に繊細に描かれ、
それぞれの思いが強く伝わってきました。
また、三人はそれぞれ人間として長所、短所があり、
それがとても魅力的に見えました。
特に、今回の中心となっていた業平と康秀の、
険悪からの友情で描かれる人となりは、
一言で「好き」とか「嫌い」とか断じられない
不思議な魅力がありました。
プレイボーイでふらふら女ばっかり求めていそうだけど、
本当は自分の身分や環境についてあれこれ言われる
のを気にしているらしい業平。
康秀を上から馬鹿にして、
康秀の歌を貶すような歌を即座に披露するような
嫌味な奴で、
謝罪に来た康秀の土下座姿を嘲笑うような下種な奴で、
そのうえで小町との約束に康秀を利用するような最低な
やつだけれど(並べると本当に酷いね業平様!)、
でも本当に本当のところはそんなに康秀を馬鹿にして
なかったらしい業平。
そんな業平の裏の苦悩や、捻くれた友情の在り様。
また、貧乏貴族の出で出世を強く望んでいるがゆえに、
高貴な出自の人に、常に妬みと卑屈の気持ちを抱く
康秀。
業平の高貴な出自や、その身分の上で歌うぬくぬくと
した余裕のある歌に、妬みのような侮蔑を抱きつつ、
いちいち自分は貧乏貴族だからと自身の身分を
嘆くだけの康秀。
自分の歌も、価値はあると思いつつ「宴会芸」だと
卑屈に客観視する康秀。
でも、本当は自分の歌は自分にしか詠めず、
業平の歌は業平にしか詠めないと分かっている
康秀。
そんな康秀の、卑屈の裏の素直な悟りや、
敵意の後の業平への率直な友情の表し方。
そして、そんな短所を多く抱えた、
でも長所も少しはある二人の友情。
なんだか、とても感動しました。
・・・。
あー、なんだかうまく書けない!
感動をうまく伝えられない!
イライラする!
えーと。
そう。
つまりは長所ばかりじゃない、むしろ短所が多い、
決して出来た人間じゃないけれど、そういう人間
たちが、不器用に不格好に友情を育んでいく様に
感動しました。
特に康秀の果てしなくうざいほどの卑屈さには、
同族嫌悪と親近感を両方覚えました。
そして、最後の「自分は自分」という素直な悟りに、
こちらまで気分が晴れました。
こういう多面的な人物像を描く作品は大好きです。
あと、康秀を馬鹿にする部分の業平様は
本当にむかつきました。
高貴な身分だからって他人の土下座を笑うとか
ないわ。まじないわ。だからぼっちなんだよ!
とか思いました。
でも本当は色々と苦悩してる業平様が好きです。
あと小町は今日も可愛いね!
・・・そんな感じでした。
今回も面白かったです。