「花咲くいろは」最終話まで観終わった後の感想です。
※ネタバレします。要注意。
◎「花咲くいろは」
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奔放な母に振り回されながらも、
平凡な高校生活を送っていた、松前緒花。
しかし、ある日、緒花の日常は一変する。
母親が夜逃げをすると宣言し、緒花は一人、
祖母の営む温泉旅館「喜翠荘」で生活する
ことになったのだ。
会ったこともない祖母との生活に、
期待を抱く緒花。
だが、そこで待っていたのは、
「女将」としての祖母と「仲居」としての自分だった。
確かこんな始まりだったと思います。
そして、そこから緒花の仲居修行が始まります。
初めての環境、初めての仕事に、
失敗を繰り返す緒花。
不手際を叱責され、考えの甘さを糾弾され、
毎日毎日落ち込むことばかり。
けれど緒花は決して挫けません。
持前の明るさと強さで、立派な仲居を目指して
奮闘し・・・・・・
と、思ったら、
いつの間にか仲居修行はどこかへ行って、
緒花と旅館従業員達のドタバタ日常が
展開されていました・・・(笑)
あれ、おかしいな。
女子高生が仕事を通して大人へと成長していく、
お仕事奮闘記じゃなかったのか・・・。
なんて、時々ぼんやり振り返ってみたりもしましたが、
何だか知らぬ間に緒花は仲居として完成し、
むしろ恋愛で悩むことの方が多くなっていました。
何故(笑)
ついでに同じく旅館従業員で高校生の
民子の恋愛もクローズアップされたり、
しかも民子の想い人である徹が緒花を好きで、
何となく三角関係が出来上がったり、
でも緒花は東京で曖昧な別れをしてしまった
孝ちゃんに「片思い続ける!」と一人で宣言したり、
一方では、女将の息子の縁がコンサルタント崇子と
急にセイエニシング!な結婚状態になったり、
もう訳が分からないよ(笑)
お仕事物というよりは恋愛物。
恋愛物というよりは恋愛もある旅館従業員達の日常。
という感じの作品でした。
最初に「緒花の仲居修行物語かな」と思ったのは、
私の勝手な勘違いだったようです。
あ、でも、緒花は初期の仲居のなの字も分からない、
特に将来の夢も目標もない状態から、他の旅館に
客として行ってもスリッパの乱れが気になる状態へ。
そして、最終的な夢は祖母のような人間になることへと
目的意識を持つようになり、立派に成長していったよう
です。
そういう意味では、やっぱり成長物でもあるのかな。
あ。
あと、女将で祖母のスイ、母親の皐月、そして緒花の、
四十万家の女三代の生き様の物語でもあったの
かなと思います。
しかし。
それにしても。
女たちが輝いてるとか恋愛関係が意外とドロドロ
しそうなほど入り組んでるとか「ぼんぼる」って
言いにくいとか、そういうことはおいておいて、
この作品を観ていて何よりも強く思ったのは、
縁の扱いが不憫で不憫で仕方ない!
ということでした。
この作品においては、総じて男性は男性性を
排除され、何事にも受動的で、物語の中心から
遠ざかるように描かれていたと思います。
女将の息子の縁も、旅館従業員の板前達も、
緒花の想い人の孝ちゃんも、皆何かしら起こった時に、
女性たちに引っ張られるだけの存在。
リーダーシップは決して発揮しない。
そう描かれていたと思います。
女性が内なる輝きを見つけるための物語、なので、
男性は中心から遠ざけ、女性を中心に据える。
そのための措置だとは思いますし、ある程度は
仕方ないと思いますが、でも、でも、
縁のこの不憫さは何とかしてあげてもよかったんじゃ
ないでしょうか!
だって。
だって。
「旅館を継ぎたくない」「母親と合わない」と言って
勝手に出て行った姉の尻拭いとして、
映画を撮りたい夢も諦めて旅館で働く。
しかし、実権はいつまでも母親の手の中。
たまに自由に任されたと思ったら、いきなり
旅館を舞台に映画を撮る、なんてどう考えても
無謀なことを許され、しかも詐欺に引っ掛かり、
借金だけ残した大失敗に終わる。
その後始末は姉のくれた情報が頼り。
母親は「縁には旅館経営の才能がない」と言い、
出て行った姉に継がせたいと本音では思っている。
そして、何だかんだの末に自分の借金のせいと
母親の一存で旅館は閉鎖。
縁がこの26話で成し遂げたことって
結婚くらいしかないじゃないですか!
しかも、その結婚だって、相手は姉を
彷彿とさせるような気の強い女性で!
縁はいつまでもいつまでも母や姉の面影に
縛られて生きていくのかと思うと、
もう不憫で不憫でなりませんでした。
少しは縁も成長させてあげてよぅ・・・。
そんな感じで。
女性達の輝きが強烈に映ると同時に、
男性、特に縁の情けなさが不憫に映った
物語でもありました。
あ。
あと、背景がとても美しくて毎回魅了されました。
喜翠荘の、床や柱の木の滑らかさや、
ステンドグラスの輝き。
磨りガラスの半透明さや日の当たる屋根の様。
建物だけでなく、そのまた背景にある木々や、
木々に沈む夕日。
また、温泉街の靄が漂う早朝の様子や、
所々濡れた路面なんかも、
美しくて素晴らしくて、毎回観ているだけで幸せでした。
最後のぼんぼり祭りも、ぼんぼりの灯りが綺麗で
温かく、今すぐその場に行ってみたくなるほどでした。
本当に素晴らしかったと思います。
26話、背景を観ているだけで幸せになれました。