その2。
◎「まひるの月を追いかけて」
- まひるの月を追いかけて (文春文庫)/恩田 陸
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異母兄が奈良で失踪した。
異母兄の恋人である君原優佳利にそう知らされた
静は、優佳利と共に、奈良へ兄を探す旅に出る。
が。
早々に、優佳利は実は偽物であることが判明。
じゃあ、アンタ誰だよ!?
そして。
兄も別に失踪していなかったことが判明。
じゃあ、何で旅してるんだよ!?
・・・というような、非常にミステリアスな展開と
驚きの連続と、古都の情緒と人間の哀愁(?)
漂う不思議な感触の作品でした。
うーん・・・。
何だろうなー・・・。
触っているけれど、いまいち掴めない状態、というか。
見ているのに、よく見えない状態、というか。
最後まで読み通して、
「ああ、終わったな。けど、始まったな」
という微妙に引っ掛かるもののある感触を抱きました。
でも中途半端かと言われると、どこかで納得している
ような気もするんですよね。
不思議だ。
全体を通して、奈良の曖昧な雰囲気が漂っていて、
それが不思議な感触を作りだしていたのかもしれません。
時代も、生者と死者の境界も、過去も現在も未来も
全てが曖昧で薄ぼんやりとしているような雰囲気。
日常から非日常へ。
自分の知っている世界から自分の知らない世界へ。
知っている人から知らない人へ。
何もかもがぼんやりしつつ変化する。
人間関係もまた変化します。
静の抱いていたイメージと、新たに知る事柄と。
それに伴って自分のイメージも他人のイメージも
変わっていく。
深刻で重い個々人の背景と、不安定な関係と
その崩壊が、奈良のぼんやりした雰囲気の中で
じわじわと伝わってくる。
不思議な手触りの作品でした。